タスク一つひとつに「締め切り」や「競争」

またエッセイの添削や、推薦状や内申書の手配などは、コミュニケーションのルールに従って、先生たちにきちんとした依頼をしなくてはならないのです。

つまり、SATで好成績を上げるために、あるいはエッセイ執筆に集中するために、「部活やスポーツから引退する」などということはありえず、とにかく最高学年になるに従って、積み重なるように「多くのタスクが同時並行で走っていく」し、そのタスク一つひとつに「締め切り」や「競争」があるというわけです。

そうした環境の中で、よい成果をそれぞれのタスクについて出していくこと、これが「自己管理能力」です。

そのような能力は、何よりもビジネスにおけるスキル、研究や公共サービスにおけるスキルに直結します。

入学後の大学のカリキュラム自体が「ややオーバーロード気味」につくってあるのも、そのためだと言えます。特に名門と言われる大学のカリキュラムと、その中にある個別のスケジュールの密度は、大変に濃くなっています。

そうした「マルチタスク」に耐えられるかというのは、学生の資質を見ていく上で入試事務室が極めて重視する点なのです。

真剣に授業を聞き、ノートをとっている学生
写真=iStock.com/PeopleImages
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アイビー校が求める時間感覚の正体

私の教え子でアイビー・リーグ校(※)に進学して、今は生物学の研究者になっている人がいます。彼女は高校時代からバイオリンを弾いていて、大学でもオーケストラ部に入っていたそうです。その彼女が、大学時代に目を輝かせてこんなことを言っていました。

「大学のオーケストラって、定例の練習が夜の9時15分からなんです。これがすごく便利で。だって、9時15分って決まっていると、そこまでの時間でできる宿題は終わらせられるじゃないですか」

基本的に全寮制だったからできることとはいえ、部活のオーケストラの練習が夜の9時15分に集合というのは、普通の生活パターンではありえないことです。

ですが、そんな日程が機能してしまい、なおかつ参加者は時間管理の都合から「便利」と思う、そこにアイビー校ならではの時間感覚を見た思いがしました。

よく、アイビー校レベルの入試を見て、結局は「文武両道でバイオリンなどを弾いている優等生」しか受からない、だからアイビーは保守的だというような印象を持つ人がいるようです。それは半分は正しいのですが、半分は違います。

確かにマルチタスクを処理するスキルを持った学生は高評価を受けます。ですが、それは「保守的な優等生」が欲しいからではなく、マルチタスク処理能力、つまり「自己管理能力」というものを、期待される人物像の中で極めて高い優先順位に設定しているからにほかなりません。

※米国北東部にあるブラウン大学、コロンビア大学、コーネル大学、ダートマス・カレッジ、ハーバード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学、イエール大学の8つの私立大学のこと。