スマートコミュニティ形成の条件とは

今年の3月、岩手県の釜石市は、「釜石市スマートコミュニティ基本計画」を策定し、発表した。この計画の原案作成にあたっては、釜石市と建設技術研究所を事務局とする釜石市スマートコミュニティ基本計画検討委員会が設置されたが、筆者は、同委員会の委員長をつとめさせていただいた。

筆者は、東京大学社会科学研究所が中心となって進める希望学釜石調査の一員として、東日本大震災が発生する5年前の2006年から、釜石のまちづくりにかかわらせていただいている。これまで本コーナーでも、「三重苦の地方を救う教書『希望学』とは」(http://president.jp/articles/-/2455)、および「釜石から始まる『スマートコミュニティ』大国への道」(http://president.jp/articles/-/6153)と題して、2度にわたって、震災前後の釜石の様子をレポートしてきた。

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図1 「釜石市スマートコミュニティ基本計画」の計画期間

東日本大震災の発生から2年を経て策定された今回の「釜石市スマートコミュニティ基本計画」は、11年12月にまとめられた「釜石市復興まちづくり基本計画:スクラムかまいし復興プラン」の一環をなすものである。そして、図1にあるように、10年の期間をかけて、釜石でスマートコミュニティづくりを進めようとしている。

なぜ、釜石市は、震災復興の一環として、スマートコミュニティづくりに力を入れるのか。それには、2つの理由がある。

第1の理由は、釜石が全国でも珍しい「再生可能エネルギーの供給拠点」だからである。この点について、「釜石市スマートコミュニティ基本計画」は、次のように述べている。

「釜石市では、東日本大震災以前から、新日鐵住金(株)の釜石火力発電所において林地残材による混焼(木質バイオマス)やユーラスエネジージャパンによる釜石広域風力発電など、民間事業者による再生可能エネルギーを利用した大規模発電が行われ、地域のエネルギー供給拠点となっています。

特筆すべきは、林地残材の利用は、新日鐵住金(株)と釜石地方森林組合とが協働で取り組んでおり、健全な森林利用や雇用創出につながるなど、国内では先進的な事例であることです。

また、釜石瓦斯は、都市ガスにプロパンガスを使うなど、熱の配給網に潜在的な力を保持しています。東北電力による鷲の滝・橋野・栗橋での水力発電、鉄鉱石採掘跡空洞を利用した日鉄鉱業(株)による大橋地下発電所(水力発電)などもあります。

釜石市では、他自治体には見られないほどの再生可能エネルギーの利用が行われており、さらに、スマートコミュニティ先進地である北九州市の継続的な支援を受けているなどの体制面も含め、全国の他の地域に比べ、スマートコミュニティの導入を進める優位性があるといえます」(原文のまま、以下同)

「再生可能エネルギーの供給拠点」であることは、スマートコミュニティ形成の重要な条件となる。