AI時代には「読めないこと」が致命的な欠陥に
これまでの説明から明らかになったことがある。AI時代には書けないことより、「読めないこと」が致命的な欠陥となるのだ。誰が作成した文章であれ、評価できなければOKを出すことも、修正の指示を出すこともできない。
ネットスラングに「TL;DR(Too Long; Didn't Read=長すぎて読まない)」という言葉がある。
SNSや倍速動画に慣れた私たちは、長い文章をじっくり咀嚼する体力を失い、少しでも長いと「要するに何?」と結論だけを急いで求めるようになった。
プライベートならそれでも問題は起こらないかもしれないが、この悪癖を仕事に持ち込んではいけない。
AIとの対話は一方的な命令で成り立つものではなく、キャッチボールである。あなたが投げたボール(プロンプト)に対し、AIはそれなりの重量があるボール(生成物)を投げ返してくる。このボールをしっかり捕球できるか、つまり読み解くことができるかが、仕事の成否を分ける。
時間がなかったり読むのが面倒だったりすると、ついAIが投げてきたボールを斜め読みして、「じゃあそれで進めて」などと安易に返答しがちだ。だが、文章を読みもしないでOKを出すのはトラブルの元だ。
というのも、AIはときおり「Aというリスクがありますが、B案で進めますか?」というように、文中に懸念点を含めた重要な確認を求めてくることがある。
また、AIの文章にときおり潜む論理の飛躍やウソ(ハルシネーション)を見抜くには、AIの言葉を正確に理解し、文脈と照らし合わせる読解力が不可欠だ。
普段、要約された文章ばかりを読んで読解力をおろそかにしていれば、AIの手綱を握ってビジネスを前に進めることなどできない。
親友や最愛のパートナーからの手紙を思い
AIを活用していい文章をつくりたいなら、常に読む力を養う必要がある。書く労力をAIに委譲して楽になった分、あまったエネルギーを「読むこと」、すなわち監督の役割であるチェックと判断に全集中させなければならない。
それには、AIが出してきた構成案や文章を、親友や最愛のパートナーからの手紙だと思って読むといい。大切な人からの手紙なら、斜め読みせず一字一句噛み締めるように読み、真意を理解しようとするはずだ。
AIに対してもそのくらいの真剣さで向き合えば、一見滑らかな文章に潜む論理の飛躍や事実誤認に気づくことができる。また、「なるほど、こういう視点もあったか」と隠れたヒントを見つけられるかもしれない。
こうした違和感やヒントを拾い上げ、磨き上げることこそが、私たち人間に残された最後の、そして最も尊い仕事なのである。

