公平性の維持に悩む管理職
企業の管理職も、同様の困難に直面している。IT企業の部長職を務めている40代男性は、部下への対応に日々悩んでいる。
「『自分は発達障害かもしれないので配慮してほしい』と相談されることが増えました。しかし診断書はない。では何をどこまで配慮すべきなのか。他の部下との公平性をどう保つのか。産業医に相談しても『まずは医療機関を受診してください』と言われるだけです」
彼が特に困るのは、「セルフ診断」を根拠に配慮を求められるケースである。
「ネットで診断テストをやったら、ADHDの可能性が高いと出ました。だから会議資料は事前にもらえませんか」
そう言われると、配慮したい気持ちはある。しかし根拠が曖昧だと、他の社員から不満が出ることもある。
「配慮してもらえると思ったんです」
職場での配慮は、組織全体のバランスの中で考えなければならない。一人への配慮が他の人の負担増につながる場合、どう判断すべきか。明確なガイドラインがない中で、管理者個人の判断に委ねられているのが現状だ。
さらに複雑なのは、配慮を求める側の心理である。20代の男性社員は、上司に発達障害の可能性を相談した後、かえって孤立してしまった。
「配慮してもらえると思ったんです。でも、上司は『じゃあ無理させないように簡単な仕事だけ任せよう』と判断して、やりがいのある仕事から外されました。『障害者扱い』されて、昇進の道も閉ざされた気がします」
配慮は時に、排除や差別と紙一重になる。「この人には難しい仕事は無理だろう」という判断が、本人の可能性を狭めてしまう。配慮という名のもとに、キャリアの選択肢が奪われることもあるのだ。


