「立ち止まれる」のが本の醍醐味
以前、とあるオーディションで講師を選ぶ審査員をしたときの話です。他の参加者が流暢にプレゼンする中、ある登壇者の男性が亡くなった奥様のエピソードに差し掛かった瞬間、言葉を詰まらせ、……数秒間、沈黙しました。
通常なら減点です。しかし、その「止まった時間」に観客は自然と考え始めたのです。「自分は、妻を本当に大切にできているだろうか」「子どもと向き合っているだろうか」「大事な人にきちんと感謝を伝えているか」「家族との時間を後回しにしていないか」「自分が突然いなくなったら、何を後悔するだろうか」と。
彼がもし流暢に話し続けていたら、そんな思考は生まれなかったでしょう。動画のように流暢ではない本なら、立ち止まり、考え、線を引き、行動につなげる言葉をノートに書き移すことができます。自分のペースで戻り、考えを深める余白があります。
動画はどうしても話が流れていき、同じように立ち止まって考えることは簡単ではありません。だからこそ、動画は入口として使い、じっくり考えるための内容は本を手に取る。この使い分けが必要です。


