経営トップの責任はうやむやに

この事件については、現地政府が詳細な事故報告書を公開している。

その中で、動物園としては「危険動物のエリアにおける作業については、きちんとしたマニュアルがあった」とし、事故が起こった原因は「あくまで現場の作業員がルールを破り勝手にショベルカーを降りたことにある」としている。

ただ、そのマニュアルがなぜ守られなかったのかが、事故原因を探る上で本来最も重要な点のはずだ。いかにマニュアルがあろうとも、それを無視した作業が横行していたのであれば、動物園全体の安全管理のあり方に疑問符がつく。

結局、「マニュアルがあるから動物園の対応は問題なし」とはなっていない。現場の責任者9人が懲戒処分を受けているため、当局は一定程度、動物園側の落ち度を認めた格好になっている。

では動物園の落ち度はどこにあったのか、事故報告書にはその点が抜けて落ちている。そのため、これはトカゲの尻尾切りではないかという疑問がぬぐえない。

上海野生動物園は中国トップの動物園の一つということもあるのか、経営トップ層には共産党幹部も名を連ねているようだ。そこまで責任追求の手が及ばないよう、あえて事故原因を曖昧なままにしているのではないのか。

共産党一党独裁という中国独特の事情が、クマ問題にも影を落としているようだ。

動物の安全管理は「社会全体の問題」

誰もが利用する動物園での事故は絶対にあってはならないものだが、残念ながら事故はたびたび発生している。

過去の記事で、韓国の動物園でヒグマがライオンを襲った事件についてご紹介したが、その中で2016年に日本で発生した群馬サファリパークでの事故についても書いた。

群馬サファリパークでの事故とは、ヒグマを放し飼いにしているエリアを車で巡回していた従業員が、ヒグマに襲われて落命した事件だ。

この時、ヒグマは車の窓を破り、車の中にいた従業員を食害している。

窓には防護用のステンレスパイプが設置されていたが、その時はたまたま外れていたという。そんな不運もあったとはいえ、車の窓すら突き破るヒグマのパワーは凄まじいとしか言いようがない。

中国では2025年にも浙江省杭州の動物園で、観客の眼前で飼育員がクマに襲われるという事件が発生しており、その時の映像を世界中のメディアが報じている。中国における動物園の管理体制は本当に問題ないのか不安視する向きもある。

ただ、こうした事故は中国に限らず、日本でも起こるし、世界中どこでも起きうるものだ。その意味で、クマを含めた動物の安全管理や、危険性は、都会の人にとっても他人事ではなく、社会全体の問題であり、行政による取り組みが必要だと言えるだろう。

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