10頭以上のヒグマが群がる地獄絵図

この時、ショベルカーとシマウマ模様の車両の周囲には、すでに10頭あまりのヒグマが集まっていた。

朱さんは、徐さんにすぐ戻るよう注意すると、シマウマ模様の車両に戻ろうとした。

だが、その瞬間、突然飛び出してきたヒグマが朱さんを襲った。

最初の一撃で重症を負ったのだろう、朱さんはあっけなく地面の上に倒れこんでしまう。

と、そこに、周囲で様子をうかがっていたほかのヒグマが、集団になって、地面に伏した朱さんに、一斉に襲いかかった。

ヒグマの群れは、朱さんの身体を水場の近くまで引きずると、爪を突き立て、キバで噛みつき、朱さんの肉を引きちぎっていく。

この時、事件現場のすぐ近くに、ちょうどクマ飼育エリアを通過中の観光バスがいた。そのバスの中から、多くの観光客が、朱さんがヒグマの群れに襲われる一部始終を目撃していた。

中には、ヒグマが朱さんの身体に食らいつき、肉を引きちぎる残酷な場面をスマホで撮影する人もいた。

この動画が、WeChat(中国のメッセージアプリ)経由でネット上に流出してしまったのである。

ヒグマの群れによる襲撃の一部始終が撮影された動画より
画像=ヒグマの群れによる襲撃の一部始終が撮影された動画より

ネットに流出した凄惨な動画の全貌

動画には、水場のほとりに横たわる朱さんのまわりに多数のヒグマが群がり、朱さんの身体と思われるものを食いちぎっている様子が収められている。また、観光バスの乗客が、不安げに見守っている姿も確認できる。

一方、ショベルカーの運転手の徐さんは、ヒグマを追い払って朱さんを救出しようと試みる。

だが、ヒグマの数があまりにも多すぎた。10頭以上ものヒグマが朱さんの身体に食いついていて、近づくことさえ難しかった。

徐さんは自力での救出をあきらめ、ショベルカーの運転席から電話で助けを求めた。

その後、午後4時36分頃、事故を聞きつけた上海野生動物園の季さんが、シマウマ模様の車両で現場に駆けつけ、ヒグマを追い払う。

季さんは、上海野生動物園の動物部門のマネージャーである謝さんに報告。

午後4時39分頃、謝さんが、獣医や飼育員を含む約20人を率いて救助に向かう。

彼らは、シマウマ模様の車両5台、トレーラー1台、高圧放水車1台、大型掘削機1台を用意しており、これでようやくヒグマを追い払い、朱さんの遺体の一部を回収することができたという。