事件が起きたのは中国「最高ランク」動物園
上海野生動物園の男性飼育員、朱さん(26歳)は、その日、クマ飼育エリアで行われていた植物の掘削工事の監督をしていた。
上海野生動物園は、中国最大級の動物園だ。
上海市の中心部から約35kmの距離に位置し、敷地面積は実に約153ヘクタール(東京ドーム32個分)もある。その広大な敷地に、約200種類、1万頭もの動物を飼育する、中国初の「国家級野生動物園」である。
「国家級野生動物園」とは、国家林業局(現・国家林業・草原局)と地方政府が共同で建設・管理する、大規模な動物園のこと。
中でも、この上海野生動物園は、中国初の国家級野生動物園であり、中国の観光地としては最高ランクの「国家5A級観光地」にも指定されている。
経営は、上海申迪集団有限公司が同公園の経営権の66.67%を所有し、中国野生動物保護協会が33.33%を保有している。ちなみにこの上海申迪集団は、土地開発、インフラ建設、および関連産業開発に従事する国有企業だ。
この上海野生動物園では、「放養式」といって、動物と人との間に檻や柵を設けず、動物に接近して鑑賞できる展示方法を採用していた。
この方法は日本でもサファリパークなどで採用されている。上海野生動物園の場合、草食でおとなしい動物の展示エリアは徒歩で見ることができるが、大型動物や肉食獣など危険動物の展示エリアでは、観客はサファリバスに乗って周遊する仕組みだ。
動物好きの26歳が就いた天職
上海野生動物園の朱さんは、工業専門学校でツアーガイドの資格を取得後、上海野生動物園に入社していた。
はじめは園内をめぐるバスのツアーガイドを担当していたが、その後、念願かなってトラの飼育員になった。
朱さんは毎日、トラを檻の外に出してから、檻の中を掃除し、トラの餌を用意。観光客のツアーが終わった後、「シマウマ模様の車両」を使ってトラを檻に戻すのが日課だった。
ちなみに、「シマウマ模様の車両」とは、上海野生動物園の業務車両のことだ。シマウマをイメージしたのだろう、車体がゼブラ柄に塗装されている。
動物が好きで入社した朱さんにとって、この仕事はまさに天職だったのかもしれない。朱さんの母親は中国メディア財新の取材に、「息子は夕食時に動物園の仕事について話すのが好きだった。すべてのトラの名前を記憶していた」と語っている。

