クマ飼育エリアで撤去作業を行っていた

そんな朱さんが事件に巻き込まれたのは、2020年10月17日。

上海野生動物園
上海野生動物園の大門(写真=周一楠/CC-BY-SA-3.0/Wikimedia Commons

3日前の10月14日、上海野生動物園では、クマ飼育エリアの植物撤去作業を、外部業者に依頼することを決定していた。頑丈な木の根っこかなにかを掘り起こして撤去することになったのだと思われる。

その後、10月16日には、外部業者の上海石油化工金義工業建設有限公司から派遣された運転手、およびショベルカーが、クマ飼育エリアで植物の撤去作業を開始していた。

10月17日にも、同じ作業を行うため、外部業者および、上海野生動物園のスタッフが集まった。

午前8時頃、上海野生動物園側の現場監督の「季さん」が、金義公司のショベルカー運転手である「徐さん」を車に乗せ、クマ飼育エリアまで案内したのが、午前8時30分ごろだった。

上海野生動物園からは、季さん、閔さん、そして、朱さんの三人が、交代で、シマウマ模様の車両の中から作業を監督していた。

一方、徐さんはショベルカーに乗り、植物の掘り起こし作業を行っていた。

「ルール違反の運転手」を助けようとして…

作業は順調に進んでいたが、午後4時30分頃になって異変が起こった。

ショベルカーの徐さんが、急に運転席から外に出たのである。

この間の事情は現地報道でもあまり定かではないが、おそらく機械のトラブルかなにかがあったのだろう。徐さんは歩いてショベルカーの右側にまわり、状態を確認していた。

ただ、そこはクマ飼育エリアのど真ん中である。動物園のルール上、危険動物を飼育するエリアにおいては、たとえ機械の故障であったとしても、外部業者の人間が無断で車を降りることは許されていない。

異変に最初に気づいたのが、先ほどご紹介した、上海野生動物園のトラ飼育員である朱さんだった。

徐さんが許可なく車両から降りたのをシマウマ模様の車両の中から目撃した朱さんは、その行動の危険性を認識する。

ただ、徐さんを助けようとするあまり、朱さんもまた、許可を得ることなくシマウマ模様の車両から降りてしまう。朱さんは徒歩で徐さんに近づき、急いで運転席に戻るよう声をかけたとされる。

だが、時すでに遅かった。