死んだフリは本当に有効だったのか
さて、張さんがクマに襲われ、咄嗟に「死んだフリ」をしたことについては、中国国内でも評価が分かれている。
中国ポータルサイト「捜狐」に掲載された記事は、甘粛省で張さんを襲ったクマは、アジア黒熊(ツキノワグマも含まれる)で、人間への攻撃性が低かったため、「死んだフリ」が有効だったと分析している。ただし「死んだフリ」が常に有効なわけではないとも指摘している。
一方、中国メディア「人民網」は、クマに「死んだフリ」は非常に危険な行為だと指摘している。
陝西省動物研究所の研究員・金学林氏によれば、「張さんが黒熊に襲われた後に『死んだふり』をしたのは、実は非常に危険な行為です。なぜなら黒熊は雑食性で、腐った死骸を好んで食べるからです」という。
さて、張さんの対処法は果たして適切だったのだろうか。
このケースでは、張さんがクマに気づいた直後に襲われているため、「後ずさりして距離を取る」のは不可能だったと考えられる。
つまり、クマに襲われてしまっているため、張さんとしては、「死んだフリ」すなわち「うつ伏せの防御姿勢」しか対処法がなかった、と考えられる。
間違った防御姿勢はむしろ逆効果
ただ、張さんが眼球や耳に重症を負った点が注目される。先にあげた東京都環境局のHPの対処法では、「両ヒジで顔をガード」することになっている。
もし張さんが「両ヒジで顔をガード」していれば、耳・眼球への被害は避けられたか、軽減された可能性が考えられるだろう。
つまり、正しい方法の「死んだフリ」をしていなかったことが、張さんの被害を悪化させた可能性があるということだ。
クマと遭遇する状況は様々であり、状況ごとに最適な対処法は異なってくる。
「いつでもこれをやれば大丈夫」という方法はないため、ケースバイケースで判断せざるを得ない。
ただ、それでも対処法の基本を正しく理解し、普段から準備していれば、いざという時に命拾いしたり、重症を避けられる場合もあるはずだ。
山間部に住む方、普段からよく山に行かれる方だけでなく、広く一般の方も、クマに出会った時の対処法について、知っておいて損はないだろう。

