激痛に耐えて「死んだフリ」を続けた
張さんは咄嗟に、「死んだフリ」をすることに決めた。
地面に横たわり、身体をみじんも動かさないようにつとめた。呼吸すら止めていたという。
ただ、クマがそれで退散したわけではなかった。しばらくの間、クマは張さんが本当に死んだのかどうか確かめていたという。
クマは前足の爪で張さんの腕に触れ、引っかき傷を負わせた。張さんは苦痛を覚えるも、「死んだフリ」を続けた。
最後は張さんの忍耐強さが勝った。クマは張さんが死んだと判断したのか、やがてその場を去っていった。
張さんはクマが十分遠ざかるまで、息を止め死んだふりを続けた。クマの気配が消え、安全を確信できるまで待ってから、張さんはその場から逃げた。
襲撃現場は張さんの自宅からわずか数百メートルの距離だったという。
張さんの顔はクマの攻撃で腫れ上がっていた。キバが深く刺さった右目は全く見えず、左目もケガを負っていたが、右目にくらべれば傷は浅そうだった。
ただ、両目をケガしていて、周囲がまるで見えない。張さんが強引に指で左目をこじ開けると、辛うじて道が見えた。そんな状態で激痛に耐えながら帰宅し、近くの住民に助けを求めたという。
病院で医師から告げられたこと
張さん自身の証言によると、そのあたりでは牧場や村の近くにクマがよく出没しており、以前にもクマに襲われ亡くなった人がいると聞いていたという。
張さん自身も、牛の放牧中に、遠くからクマの姿を2回ほど見たことがあった。ただ、その時のクマは張さんをただ見つめるだけで襲ってはこなかった。
張さんの村の高齢者から「クマに襲われたらすぐ死んだフリをすれば逃げるチャンスがある」と聞いていた。
張さんは「その言葉を覚えていたから命拾いしました」と話している。
事件発生から約20分後、張さんの夫が事件を聞いて慌てて駆けつけた。
夫は張さんを町の保健所へ連れて行った。張さんはそこではじめて傷の処置と止血を受けた。
その後、車で街の病院へ行き、診察を受けたが、医師から「傷が極めて深いため、眼球を維持できない可能性が高い。眼球を摘出して義眼を入れるしかない」と告げられたという。

