供給面からドイツの景気が下振れする恐れ
こうした中間財不足は、ただでさえ不調が続くドイツの製造業のさらなる重荷となり、景気を供給面から下押しすると懸念される。ドイツの製造業生産(2021年=100)は2023年の前半をピークに減少が続き、2026年3月時点で92程度まで水準を切り下げている(図表2)。ここで注目されるのが、先のIfo調査との兼ね合いだ。
Ifo調査で中間財不足が深刻だと訴えている業種(化学工業など)の生産水準を確認すると、いずれも足元にかけて、生産の水準が製造業の平均を下回っていることが分かる。つまり、現時点で中間財不足が深刻な業種は、すでにイラン発のエネルギーショック以前の段階においてドイツ製造業の不振を象徴するような業種であったわけだ。
その中でも気がかりとなるのは、やはり化学工業である。ロシア発のエネルギーショックを受けて、生産水準は3割近く減少した状況が続いている。さらにイラン発のエネルギーショックを受けて、化学工業の生産水準は一段の下振れが懸念されるところだ。ドイツの労働市場がいくら硬直的とはいえ、リストラは避けられない状況となる。
例えば、ドイツのみならず世界を代表する化学メーカーであるBASFは、ロシア発のエネルギーショックを受けて大型のリストラを敢行しており、2026年の年明けにもさらなるリストラを予定していたところだった。そこにイラン発のエネルギーショックが生じたのだから、まさに“泣き面に蜂”といった状況に追い込まれてしまった。
購買力を維持することの意味
苦境に直面するドイツであるが、それでもまだ通貨高を維持できていることは救いと言える。ドイツの実質実効為替レート(2021年=100)を確認すると、2022年を底に増価基調に転じ、2026年に入っても高位にとどまっている(図表3)。供給網(サプライチェーン)が混乱しているとき、強い通貨を持つことは非常に重要である。
ところで、実質為替レートは名目為替レートと内外価格差の乗数であるため、実質為替レートの変動は名目為替レートの変動(為替変動要因)と物価差の変動(物価差要因)で説明することができる。そこで実質為替レートの変動がいずれの要因によるところかを確認すると、2023年以降の増価はほぼ一貫して為替変動要因である(図表3)。


