心臓病で死なない世界が実現できる可能性

【大﨑】澤先生といえば、万博のパソナ館で展示された「iPS心臓」を思い出す方もたくさんいると思います。ちょっとあれを分かりやすく説明してもらってもいいですか?

【澤】iPS細胞というのは、何にでもなれる細胞です。皮膚や血液の細胞からiPS細胞を作ります。

【大﨑】iPS細胞は2012年に山中伸弥先生たちがノーベル生理学・医学賞を受賞して、注目を集めました。

【澤】そのiPS細胞を自動で収縮する心筋細胞にします。この心筋細胞を立体化して心臓の形にしたものが、iPS心臓です。

【大﨑】ぼくも観に行きましたが、培養液の中でiPS心臓がドクドク動いていました。前回の万博の月から持ち帰ってきた石ぐらいのインパクトがありました。子どもがすごく喜んでいたのが印象的でした。澤先生はまさに医療の先端を走っておられる。未来の医療はどんなふうになるとお考えですか?

【澤】ぼくが目指しているのは、心臓病で死なない世界を作ること。ぼくが医者になった頃、心臓手術を受けた患者さんのうち10パーセントが亡くなっていました。

今は0.5パーセントに下がっています。心臓移植、そしてiPS細胞を使った治療により、本当に心臓病で死なない世界が実現できる可能性が出てきました。

【大﨑】ぼくら超素人でも、ここ10年ぐらいの医療の進歩はすごいと思います。

【澤】かつて不治の病と言われていた、がんも治るようになっています。心臓病、がんで亡くなる人はいなくなるかもしれません。

【大﨑】ロボット支援手術も凄いですよね。

綺麗な夕陽が見えるパワースポット

【澤】大阪けいさつ病院には今、5台のロボットがあります。ロボット支援手術の優れたところは、身体への負担が少ない、低侵襲だということ。かつてお腹を切る手術には大量の出血が伴いました。

大阪けいさつ病院広報誌『OIM∞』
大阪けいさつ病院広報誌『OIM∞』

手術後もなかなかご飯が食べられないので3週間ぐらい入院していました。今は手術にもよりますが、ロボットを使って手術は一時間半ぐらい。出血も50ccほど。術後三日から五日で退院できる。

【大﨑】ぼくが面白いと思うのは、最先端の医療を行なっている大阪けいさつ病院のすぐそばに、庶民的な桃谷商店街があること。さらに聖徳太子が建てた四天王寺も近い。四天王寺には、福祉施設である悲田院、医療施設である施薬院が備わっていました。

いわば日本の医療の起源です。なんかそういう力を感じるんです。ぼくは散歩が好きなんですが、大阪けいさつ病院のある夕陽丘へ向かって口縄坂の石畳を上がって行くと、綺麗な夕陽が見える。昔から夕日を眺めることのできる見晴らしのいい高台だったんでしょうね。

【澤】(深く頷いて)パワースポットです。ぼくは大阪けいさつ病院を中心として医療、健康を促進する夕陽丘メディカルスマートシティ構想というのを考えているんです。是非、大﨑さんにも協力をお願いします!

【大﨑】もちろんです!

大﨑 洋(おおさき・ひろし)
一般社団法人mother ha.ha代表理事
吉本興業ホールディングス前代表取締役会長。2023年取締役退任。現・鳥取大学医学部附属病院運営諮問会議委員、近畿大学客員教授。2023年3月全広連日本宣伝賞・正力賞受賞。2023年5月大阪・関西万博共同座長に就任。2024年6月公益財団法人 国際親善協会 クリエイティブディレクターに就任。2025年5月日本映像事業協会 会長就任。2025年8月大阪けいさつ病院 エグゼクティブアドバイザーに就任。

澤 芳樹(さわ・よしき)
大阪けいさつ病院総長
大阪大学医学部卒業後、第一外科入局。ドイツ・マックスプランク研究所留学後、2006年大阪大学大学院心臓血管外科教授。重症心不全外科、補助人工心臓、心臓移植、iPS細胞を用いた再生医療を牽引。2021年、大阪警察病院院長、2023年、社会医療法人警和会(現・大阪メディカル&サイエンスセンター)理事長。2026年4月、大阪けいさつ病院総長に就任。大阪大学名誉教授。紫綬褒章受賞。

(写真=奥田真也、構成=OIM∞編集部)
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