産卵の直前まで海にいるマカロニペンギン属

幸いにしてこの謎は、最近の研究により、完全にとはいわずとも大部分が解明された。研究者らが着目したのは、マカロニペンギン属の回遊パターンである。

え、回遊と産卵が関係あるのかって? 実は大いに関係がある。限りある時間とエネルギーをどんな活動にどう割り振るべきかが、生きとし生ける者にとって常に大きな課題だからだ。

マカロニペンギン属は、南極大陸をぐるりとめぐる広大な海に点在する大小の島々で繁殖する。四方八方、海しかないという環境だ。親鳥は毎年、子育ての重労働から解放されると海に出て、マグロのごとき回遊生活に入る。何カ月間も上陸せず、海面で休息や睡眠をとりながら、魚やオキアミなどの獲物を求めて幾千キロも泳ぎ回る。そして翌年の春に島に戻り、配偶者を探して交尾をし、メスは卵を産む。

ペンギン類の年間の生活サイクルを網羅的に調べると、マカロニペンギン属だけが産卵の直前まで海にいて、上陸するや否や相当慌てて交尾、産卵をこなすことがわかった。上陸から1個目の産卵までの期間が、他のペンギン類では15〜30日なのに対し、マカロニペンギン属では10〜15日しかなかった。

マカロニペンギン
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1個目の卵を打ち捨て、2個目に全力を注ぐ

これは繁殖生理を考えると面白い。メスの卵巣内で卵黄の形成が始まり、受精の準備が整うまでに、ペンギン類では15日間程度かかる。なのにマカロニペンギン属に限り、これより短い期間で上陸から産卵に至る。ということは、他のペンギン類が上陸してからじっくりと1個目の卵黄形成を始めるのに対し、マカロニペンギン属は大海原をせっせと泳ぐ最中にそれを始めていることになる。

激しい遊泳運動中に形成された1個目の卵は、十分なエネルギー供給を受けられず、サイズが小さくなる。実際、マカロニペンギン属において、上陸から産卵までの期間が短かったメスほど(遊泳中に卵黄形成を進めたメスほど)、1個目に産む卵が小さいことが知られる。

そして小さな1個目の卵は、よしんば無事に孵ったにせよ、生まれる雛が虚弱で巣立ちまで成長できる見込みが薄い。そのためマカロニペンギン属のメスは、1個目の卵を非情にも打ち捨て、2個目の卵に愛情と労力のすべてを注ぐのである。