資産2億円でも相続税0円に!
では、ここまで紹介した対策について、総資産2億円(うち240平方メートルの不動産1億円)の4人家族のケースを想定し、節税効果を試算してみよう(父親が60歳から準備を始め、83歳で永眠と仮定)。
まず、60歳の時点で、年間110万円の生前贈与を家族3人に開始し、1500万円の終身生命保険(月額5万円)に、子ども2人を受取人として2つ加入する。そうすると、80歳の時点で贈与と保険料支払いの合計で現金資産の1億円のうち9000万円が軽減される。
相続財産は不動産1億円と現金1000万円となるが、不動産を母が相続すると、小規模宅地特例で80%減額されるため、評価額は2000万円。現金は子ども2人で500万円ずつ分け、生命保険金1500万円を受け取る。すると遺産総額は6000万円。基礎控除額(8000万円)内で収まるため相続税はなんと0円ですむ。
何も手を打ってなければ基礎控除額を差し引いた1億2000万円に課税されると考えると、長期スパンでコツコツ準備をすることが、予想以上の節税パワーを生むことがわかる。
加えて、もう1つ大事なポイントがある。それは「被相続人が遺言や財産目録をきちんと残しておくこと」と長谷川氏は言う。なぜか?
相続税の申告&納付期限は、相続開始(=被相続人の死亡日)から10カ月以内と意外に短い。遺産分割でもめたり、遺産の整理で手間取ったりすると、あっという間に期限が到来。それ以降は、遺産分割の決着がついていなくとも、お構いなしに無申告加算税や延滞税などがかかってくる。
よって、「遺言なんて縁起でもない」などと言わず、万一の事態を見据えて早めにしたためておくべし。余計なコストと時間のロスを防ぎ、残された家族の幸せにもつながることは言うまでもない。