教授陣や学科の大幅縮小を強いられている、名門フンボルト大学。(PIXTA=写真)

アメリカや日本の親たちが大学の学費高騰に頭を痛める中、ドイツではいったん有償化した大学教育を再び無償にする動きが広がりつつある。

高等教育への自由なアクセスが国の発展の土台であるという考え方から、ドイツの大学の大半を占める公立大学では、授業料は原則として無料だった。だが2000年代、大学の運営を担う州政府が、老朽化した建物や設備の改善、教職員確保のための有償化を主張。激しい議論の末、2005年に州の裁量による公立大学の有償化が認められ、一時はドイツ全16州のうち8州、全大学のおよそ70%で、年間1000~1300ユーロ(約13万~17万円)の学費を徴収していた。

だが、学生や一般国民には当然のように不評で、学費無償化を掲げた政党が州の選挙で勝ったり、住民投票で無償化派が多数を占めたり。その結果、再び学費徴収を廃止する州が続出し、最後に残った2州でも間もなく無償化されるとの見方が強い。

とはいえ、無償ならそれでいいのかという指摘はドイツ国内にもある。多くの大学では、予算不足から教育環境が急速に悪化。「学費はタダでも中身は二流」といった批判は絶えない。名門フンボルト大学ですら、教授陣や学科の大幅縮小を強いられている。大学関係者の間では、いずれ再度の有償化は避けられないという声もあるが……。

(PIXTA=写真)
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