会議は短く、集中する。メモは取らない

その後は夕方まで打ち合わせや会議の連続です。1日20件前後で、1件にかける時間は長くても30分で、5分で終わる場合も少なくありません。

どうして即断即決できるのか? それは自分の中に公式のようなものができているからでしょう。マネジメントというのは工学に通じるものがあり、答えがだいたい決まっています。あとは「X+Y=Z」というように組み合わせてスキームをつくり、そのスキームにおさまるのか、おさまらない場合は、どのファクターが違うのか、と考えていく。いつもこのやり方なので、LEDのプロジェクトも即決でした。

会議の時間は短いですが、それだけ集中力が必要になります。実は、11年3月から、メモを取ることをやめました。きっかけは、メモを取っても2度と見ないことに気づいたからですが、メモを取らなくなると、聞き逃すまいという緊張感が出てきて、以前に増して集中できるようになった。理解すれば、情報というのは忘れないものです。

また思考を深める作業も大切です。何かを思いついたときに1度立ち止まってしっかり考える。ここで消化しておかないと次に進んでも無駄です。資料は、ざっと目を通したものは捨ててしまうため、ファイルも残りません。

当社は年1回のグループ戦略会議で、事業戦略を決定しています。この会議は70回目にやっと辿り着く“本会議”となりますが、そこまで69回の小規模な会議を重ねています。ドラフトの段階から全部聞きますがメモを取らないので、毎回真剣勝負です。

当社では、10年度に約6兆4000億円の売上高を記録しました。テレビやPCなどデジタルプロダクト、半導体、原子力や発電事業などの社会インフラ、家電の4つの柱が中心で、ほかに将来に向けて、スマートコミュニティなどを重点項目に掲げています。

これらの事業戦略においても時間の感覚は大切ですが、たとえば当社の半導体事業がよい例になります。半導体事業というのは事業の振り幅が非常に大きく、ときに需要に対して生産過剰になり、大量の在庫を抱えてしまう。かといって、日進月歩の半導体の世界では、投資をし続けなければ、事業そのものが成り立ちません。

こうした半導体事業の特性を考えたとき、1つの考え方として、設備投資を微細化するという選択肢があります。需要の増加に対して、建屋を1つ建てていくような増産投資は必要です。これは年単位の時間軸による投資です。