信頼できる書評とは何か

ただ、人によって違うとは思いますが、たまたま考えがとても似ている人がいたとして、その人がおもしろいと言うのだったら、きっと私が読んでもためになるだろうと推論することはあります。

だからといって、「この人が言うから絶対に正しく、良い本だ」とは思わない。そういう程度のこと。けれど、そうした人を知っていると、一つの道標として助けられることはあります。

私にとって、たとえば、丸谷才一さんなどが、そういう方だったと思います。

丸谷さんはもともと英文学者だけれど、晩年は王朝和歌などもっぱら日本の古典文学にも深い興味を寄せてよく勉強しておられました。

本を読む高齢男性
写真=iStock.com/Joy10000Lightpower
※写真はイメージです

信頼できる読書人の特徴

もう一人、私が本の読み手としては非常に素晴らしいなと思うのは川本三郎さんです。

林望『書物を楽しむ あえて今、紙の本を読む理由』(朝日新書)
林望『書物を楽しむ あえて今、紙の本を読む理由』(朝日新書)

偏りがなくて、難しい題材でも非常にわかりやすく面白くお書きになりますから、川本さんが書かれた本のなかで紹介されている文献などあると、ついつい古書でなりと取り寄せて読んでみるということになります。

とかく、大学教授なんて肩書きの人が書くと、やたらと気取ったような難解な文体で書いてあったりして、ちっとも読む気にならないことが多い中で、川本三郎さんの興味の持ち方が自分と共通する部分も多く、しかも文章がたおやかで解り易い。

だからこそ私からみて読書人として信頼できる……と感じるのです。現代の作家の中で、最も真摯しんしに深く本を読んでおられる方ではないかと思います。

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