相手が快感を覚えるスイートスポットを見極める
この手法は、ビジネスでもまったく同じです。「最初のストロークで、相手の欲しい球を投げられるか」、これで、その後の会話の進み方と、ビジネスの成功が決まってきます。
そもそも「ストローク」という単語は、医学では、「脳卒中」や「心筋梗塞」などの致命的な大打撃のことを指します。一方、パフォーマンス学では、「相手に対する決定的なよい第一声」のことを指します。これが素晴らしく、相手から笑いがとれたら最高です。
さてそこで、初対面で相手の気持ちを捉えるストロークが出せるかどうかの1番の決め手は、自分がどれだけ「相手が話したいことを正確に数多く知っているか」にかかってくるのです。
出会いの一瞬でまず、相手が快感を覚える「スイートスポット」に最初のストロークを投げることに、あなたは全力を費やさねばなりません。どうしたらよいのでしょうか?
それにはまず、「事前の情報収集」を徹底しましょう。
例えば、相手の学歴、好み、住まいの場所、相手の会社の最近の業績、今後のビジネス展開や事業計画など、さまざまな情報を集めましょう。それらを準備してから相手に会わないと、第一声が「的外れ」なものになります。
私自身は初対面の相手に対して、世俗的な言い方をすれば、「百発百中」で仕事を決めています。それは、事前に集めた情報から「相手が何を話したいか」を徹底的に分析し、その中から「第一声では何を質問するか?」を前もって決めてから、その場に臨んでいるからです。
逆の例を挙げれば、もっとわかりやすいでしょう。
例えば、私のもとにはいくつかの新聞・雑誌、テレビなどのメディア関係者が、パフォーマンス学に関するインタビューにきます。
なかには、名刺交換が済んだところですぐ、「ところで、パフォーマンス学ってなんですか?」と聞く人がいます。そういう人とはまず、その後の会話がうまく進みません。前もって何冊か私の本を読んできて、「パフォーマンス学について自分はこのように解釈していますが、これで合っていますか?」「本当はどういう意味なんですか?」と聞かれれば、こちらも「まあ、そんなに勉強してくださったんですね」と、嬉しくなって感謝します。そして、質問に対してたくさん返すことができます。
170冊以上も自著を出しているのに、何ひとつ読まず、何も調べず、「パフォーマンス学ってなんですか?」と聞かれると、正直なところ、そこに命をかけている私としては大変に不愉快です。思わず「もう、やめませんか?」と言いたくなるけれど、そこは社交辞令で「まあ、オホホ」などと笑いながら、多少の話をします。でも、内心「とんでもないストロークをもらった」「これは完全なるアウトゾーンだ」と思っているので、あまりいいインタビュー内容にはなりません。