人生にムダなことはない

そんな中、深謝さんは、なんとか描き上げた漫画を、2024年2月のコミティア(同人誌即売会)の出張編集部へ持ち込んだ。

深謝『53歳でクアッド(4人)介護、始まっちゃいました』
深謝『53歳でクアッド(4人)介護、始まっちゃいました』

するとそこで初担当が決定。念願の商業デビューにこぎつけることができた。

その時に持ち込んだ介護漫画、「53歳からクアッド(4人)介護、始まっちゃいました」が、そのままデビュー初連載になり、2024年10月から12月まで、主婦の友社のWEBマガジン「ゆうゆうtime」にて配信された。

さらに2024年12月。同じく主婦の友社から、初コミカライズ本『マンガでわかるモンテッソーリケア』が発売された。

深謝さんは現在、大好きな漫画を描きながら、妹と共に岡山の実父、大阪の実母を遠距離介護している。

和氣伸吉、深謝『マンガでわかるモンテッソーリケア』(主婦の友社)
和氣伸吉、深謝『マンガでわかるモンテッソーリケア』(主婦の友社)

85歳の父親は要支援2。デイサービスと訪問介護をそれぞれ週2回利用。85歳の実母は要介護2。訪問看護と訪問リハビリを週1回利用している。

2世帯同居する義父母は、92歳の義父が要支援2、90歳の義母が要介護2。2024年から訪問介護をそれぞれ週1回利用。さらに2025年から義母は、訪問診療を月2回利用し始めた。

「義父母のキーパーソンは夫に任せました。夫婦で役割分担をして、仕事で不在が多い夫は主に、義父の気持ちの受け止めと、可能な範囲で義父母のケアマネ対応や、義父の施設見学の同行、通院の付き添いなど。家にいることが多い私は、義母の気持ちの受け止め、義両親の間のクッション、義母の外出時の仕度手伝い、義父外出時の見守りなど。夫には日常的に愚痴を聞いてもらっています」

一方、両親の介護の分担は、妹は、帰省時の車の運転、父母の金銭管理、通院付き添い、父宅掃除やゴミ処理など肉体労働。深謝さんは、父母のケアマネとの調整や、安否確認システムの構築など。父親と同じ県内在住の叔父は、ときどき父宅に通い、草刈りや枝払い、掃除やゴミ処理などをしてくれている。その他、近隣住民の見守りにも支えられているという。

深謝さんは、子どもの頃は妹と関係が良くなかったが、「両親の介護を通じて『同志』と感じることができるようになった」と話す。

「介護は、絶対に無理しないでください! なるべくプロにお願いして、抱え込まないで! ……と言いながら私自身はめまい、尿路結石、睡眠障害、アトピー悪化と、4回倒れました。わかっていても、予定通りに行かないと、タスクを終わらせるために無理してしまう。でも、4回倒れて学んだことは、状況をコントロールしようとすればするほど、自分がアンコントロール状態になって壊れてしまうということです。そもそも介護って『想定外事態』が起こるのが常。『介護は想定外がデフォルト』と最初から思っておけば、予定外のことが起こっても、『ハイハイ、そう来ると思ってましたよ。OK、OK』と受け止めやすいと思います」

介護に翻弄されて、やりたいことを諦めるのではない。深謝さんは、漫画家になる夢が叶った今の生活を手放さない。

「予定外のことがいつ起こってもいいように、一日30分でも15分でも自分の時間を確保することが大切だと思います。早朝にひとつでもいいからタスクを前倒しでこなしておくと、その日の自分にOKが出せます。そうした日々を積み重ねて、『本当は○○したかったのに、介護のせいでできなかった』と言い訳したり恨んだりせず、人生を終えられれば良いなと思っています。自分が納得できることが一番大事なので。挫折も介護も、体験したからこそ描ける。それが誰かの役に立つなら、やっぱり人生にムダなことはないんだと思います」

介護は突然始まり、否応なく家族を巻き込んでいく。

だが深謝さんは、ただ巻き込まれているのではなく、自分の夢も両親と義両親の介護も、諦めないことを選択している。

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