祖父母との同居がもたらす効果
もう一例、ご紹介しましょう。武蔵中学に合格したIくんの家です。こちらは都内では珍しく当時4世代同居していた家族です。
もの心ついたときから日常の関係であるお父さん、お母さんと過ごす2階の空間、おじいちゃんとひいおばあちゃんが生活している1階の非日常空間での暮らしは、男の子のIくんの中に、年配者を大切にするという優しい心を育みました。また、おじいちゃん、ひいおばあちゃんが食べているもの、観ているテレビ、読んでいる本、全てが刺激となりました。
本好きとなったIくんが小学生4年生のときに学校で書いた作文、“らくがきするな”は、教室の後ろにある「4年2組のうしろの黒板」が生徒たちに「らくがきしないでね!」と語りかける擬人法で書かれた作文です。好奇心旺盛なIくん、擬人法の発想は、おじいちゃんの読んでいた夏目漱石の『吾輩は猫である』をヒントにしたものでした。
その他にも、おじいちゃんの読んでいた本を見て知らない漢字を覚えたり、おじいちゃんが集めていた切符を見て地名を覚えたりと、お父さん、お母さんだけと同居している家庭とは違った生活を楽しんでいました。
「頭のよい子」が育つ家を作ろうとしたが…
私は調査結果をふまえ、建築家の堀越英嗣先生、松岡拓公雄先生とともに、先述の「生涯コミュニケーション探究学習」の考え方を反映させた家づくりを開発しました。
家をつくるとき、親なら誰でも考える子ども部屋、あるいは、子ども部屋に該当するスペースは必ずしも勉強部屋、スペースではないことを、一般子育て世代に普及させようと考えました。幸い、新しいテーマを欲していたマンションデベロッパー、ハウスメーカー、地方の建設会社、工務店などから多くの問合せがありました。また、テレビ、新聞、ラジオを中心に多くのメディアからも取材があり、これで「生涯コミュニケーション探究学習」3Xが一般の子育て世代に普及すると大変期待しました。日本の子どもたち全員を「頭のよい子にする」というのが、私の目標となりました。


