イラン発のエネルギーショック、それと同時に起きている肥料危機がヨーロッパに問いかけるもの――。それはこのような状況を受けても、経済安全保障の名の下に脱ロシア化を進めることの是非ではないか。老獪であるはずのヨーロッパは、良くも悪くも物事の白黒をつけない知恵を有していたはずだが、近年はそれを忘れ去ってしまったかのようだ。
エネルギーショックと、それに伴う肥料危機が生じたことで、ヨーロッパの物価は再び上昇が加速する可能性が高くなっている。こうした環境の下でも、ヨーロッパは肥料の脱ロシアの取り組みを進めるのか。そしてそのコストを、各国の国民に転嫁していくのか。それとも、ロシアとの関係の改善を模索する方向に舵を切り直すのだろうか。
多角化の名の下にリスク分散に失敗
経済安全保障の名の下に、特定の国に対する輸入依存度を引き下げることがグローバルに叫ばれている。それ自体は正しい見方だろうが、一方で政治的な判断を優先し過ぎると、かえって経済的な苦境に陥ることが多い。経済安全保障が抱える一種のジレンマであるが、ヨーロッパの肥料の脱ロシア化の取り組みは、そのジレンマを表す好例といえる。
つまりヨーロッパは、経済安全保障の観点から脱ロシア化を進めた結果、イラン発のエネルギーショックであり、それに伴う肥料危機の悪影響を強く被るに至った。結局のところ、ヨーロッパはリスク分散に失敗した。business is businessの観点からロシアとの関係を維持していれば、ヨーロッパはイラン情勢の悪影響を軽減できただろう。
日本は湾岸諸国のみならず、イランとの関係も伝統的に良好である。今回のイラン情勢に対して、アメリカに過度に肩入れすれば、中東全体との関係が拗れることになりかねない。日本の経済安全保障を考えれば、こうした展開を回避しなければならない。この点、多方面に配慮した現実的な外交が展開されることが、切に求められる。
ロシアとの関係も同様だ。ウクライナ侵攻を巡り、日本は主要国の一員としてロシアに制裁を科している。一方、ロシアとの経済関係を冷え込ませたままでいいのかという現実的な課題が付いて回る。イラン発のエネルギーショックは、日本が重視する経済安全保障の在り方そのものについても、その妥当性を問う好機になったと言えよう。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)


