これからの季節特に気になるのが肌トラブル。YouTubeチャンネル・テレ東BIZ「橋本幸治の理系通信」が人気を博している橋本幸治氏は「生体シールドでもある皮膚には『良い皮脂』と『悪い皮脂』がある。その『悪い皮脂』を選んで洗い流すというすごい技術が日本にはある」という――。

※本稿は、橋本幸治『未来を見通すビジネス教養 日本のすごい先端科学技術』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

鏡の前で肌荒れに悩んでいる女性
写真=photoAC/bBear
※写真はイメージです

なぜ肌の悩みはなくならないのか

皮膚は「人体最大の臓器」である――。この事実は、普段あまり意識されることのない皮膚の重要性にあらためて気づかせてくれます。

面積は約1.6平方メートル(畳1枚分)、重さは成人で約3〜4kgにもなり、皮膚は単なる「身体を覆う膜」ではありません。生命を守り、外界との関係を築く、高機能な“生体シールド”なのです。

皮膚は、外的刺激や病原体から体を守る「防御壁」としての役割に加え、「感覚器官」や「体温調節器」としても機能します。さらに、内分泌や免疫の働きにも関与していて、皮膚表面に存在する常在菌は、有害な微生物の増殖を防ぐバリアとして活躍しています。

このように多機能な皮膚ですが、現代の生活環境はその働きを脅かしかねません。たとえば、蒸し暑い夏には背中のベタつきが気になり、エアコンによる乾燥で肌がかゆくなることも。花粉やPM2.5などの影響で肌荒れを起こすケースもあります。

部位によっても悩みは異なり、背中やお尻はニキビや皮脂トラブルが多い一方、腕や脚は乾燥しやすい――。このように複雑な肌の悩みを同時に抱えている人も少なくありません。

そんな肌トラブルに新たなアプローチを提示したのが、花王の「皮脂選択洗浄技術」です。肌にとって必要な皮脂は残しつつ、肌トラブルの原因となる「悪い皮脂」を選んで洗い流すという、これまでにない画期的な技術です。

皮膚洗浄における根本的な課題とは

そもそも石鹸や洗剤は、どのようにして汚れを落としているのでしょうか。

その鍵を握るのが「界面活性剤」と呼ばれる成分です。

界面活性剤とは、水となじみやすい「親水基」と油になじみやすい「親油基」という、性質の異なる2つの部分を併せ持った分子です。この構造によって、水と油という本来は混ざらないものの間に入り、「界面張力(両方を隔てる力)」を下げて混ざりやすくします。界面活性剤はまず油汚れに吸着し、それを取り囲んで微粒子化し、水の中に分散させます。こうして水に溶けやすくなった汚れは、再付着することなく洗い流されるのです。

このように、石鹸や洗剤は、水と油という本来なじまないものを「橋渡し」することで、汚れを効率的に落とす役割を果たしているのです。

しかし、「皮膚洗浄」において、皮脂を完璧に除去することだけを目的にすると、この界面活性剤はある根本的な課題に直面します。

それは、肌荒れなどの原因となる「悪い皮脂」だけでなく、肌のうるおいに必要な「良い皮脂」まで洗い流してしまうことです。まさにそうした中、花王は「悪い皮脂」を選択的に洗い流すことができる界面活性剤の開発に挑んだのです。

これを実現するために、まずは「悪い皮脂」の正体を突き止める必要がありました。