意外なところにあった解決策

2023年、花王は、20〜45歳の日本人女性33名の皮脂を採取し、皮脂の量・質と、肌のうるおいを保つバリア機能との関連性を調査しました。

その結果、皮脂中の「不飽和脂肪酸」という成分の比率が高いほど、バリア機能が低いことが確認されました。

不飽和脂肪酸は、皮膚に赤みや炎症を起こしたりすることが知られている成分です。「悪い皮脂」とは、「不飽和脂肪酸」の比率が高いことだったのです。

そこで花王は、この不飽和脂肪酸に対する洗浄効果が高く、かつ、その他の皮脂成分への影響が少ない界面活性剤を徹底的に探索しました。

その結果、驚くべきことに、花王自身がサステナブル界面活性剤として開発し、衣料用洗剤に使用されていた「バイオIOS」という界面活性剤が、唯一、まさにこの「皮脂選択洗浄性」を有していることを見出したのです。

従来の界面活性剤の分子は、油になじみやすい鎖のような形をした親油基の端に、水になじみやすい親水基が付いた、マッチ棒のような形をしています。

一方、バイオIOSは、長い親油基(炭素鎖長16〜18)を持ちながらも、その親油基の中間部に親水基が付いた構造をしています。この特徴的な「枝分かれ」構造により、通常は溶けにくい長い炭素鎖(親油基)を持ちながらも、水にも溶けやすい性質も併せ持つという、ユニークな性能を発揮します。

これまでトレードオフの関係にあった、「水への溶けやすさ」と「油汚れを落とす性能」を高いレベルで両立することができたのです。

花王 衣料用洗剤「アタックZERO」シリーズ(現行品)
花王 衣料用洗剤「アタックZERO」シリーズ(現行品)画像提供=花王

花王は2019年に“花王史上最高の洗浄基剤”としてこの「バイオIOS」を発表。油汚れに強く、かつ水に溶けやすいという特性から、衣料用洗剤「アタックZERO」に採用され、洗浄の世界に大きなインパクトを与えました。2023年には、日本化学会の「化学技術賞」を受賞するなど、その革新性が評価されています。

このバイオIOSが、皮膚洗浄の分野においても「皮脂選択洗浄性」という新たな機能を発揮したことは、開発した花王自身にとっても「大きな驚き」でした。