イタリアの悲劇
消費税は、社会保障に充てられる目的税です。先進国中、財政赤字が対名目GDP比で230%を超え最悪と言われる日本の財政状況の下で、なおかつ今後の医療や介護、年金の社会保障費が大幅に増加すると見込まれる中での減税です。
私は、イタリアの知人から聞いた話を思い出しました。
イタリアでは、基本的に医療は無料です。先進国では財政状況が日本に次いで悪い(対名目GDP比135%)イタリアですが、EU加盟の北の国々で医療が無料のために、イタリアもポピュリズムもあり医療費は無料です。しかしそのレベルは、結構ひどいという話です。
その知人は、具合が悪くなり病院に行って点滴を受けたのですが、点滴が空になっても数時間そのまま放置され、結局自分で点滴の針を抜いて帰ったと言っていました。そのため、お金持ちは自費のクリニックへ行くそうです。財政状況が悪いために、公共の医療では十分な治療が受けられないことがあるのです。
イギリスでも、手術まで数カ月から数年待たされるという報道がありました。財源の関係で公的に十分な医療の提供ができなくなっているのです。
日本でも、現状でも医療サービスのレベルを政府が落とそうとしている話を医療関係の経営者からは多く聞きます。ひとつの方法はベッド数の削減です。厚生労働省はこれを推し進めようとしています。全国レベルでベッド数を大幅に削減する話が進んでいるのです。
ベッドがあるから入院させて、その分、高額な医療費がかかるのですが、ベッド数、ひいては病院を減らすことで、医療の供給量を減らそうとしています。とくに高齢者には、在宅での治療へのシフトが今後急速にすすめられるようになります。
また、病院だけでなく一般の診療所も、現在では無制限に行われている治療や投薬に制限を設ける動きや、ドラッグストアでも買えるような湿布薬のような薬に対しても、診療所などでの処方に制限をかける動きもあります。これも診療を差し控える効果もあり、医療費の削減を促すものです。
消費税減税の財源を確保できなければ金利急騰も
消費税を削減することは、社会保障のレベルの低下を促す危険がありますが、それを避けるためには当然、その財源を確保しなければなりません。
財源確保には、法人税や所得税などの課税強化、あるいは政府保有財産の売却、それとも赤字国債の増発などの方法が考えられます。
しかし、法人税や所得税の増税には、大きな反発が予想されます。財産税を新設するなら自民党支持層が多い富裕層からの猛反発は避けられません。また、政府に売るものが十分にあれば、こんな財政状況にはなっていません。
外貨準備が1兆3300億ドル以上ありますが、もともと外貨準備を賄う資金は短期の国債です。今は、円安で「ほくほく」なほどの利益が出ていますが、いずれにしても国債の返済が必要です。
そうすると、安易な手段は赤字国債の増発です。そして先般の18兆円ほどの補正予算の時もそうであったように、赤字国債により消費税減税が行われる可能性も低くはありません。そうなると、それでなくても急上昇した長期金利がさらに上がります。
図表1にあるように、2025年1月に1.2%程度だった10年国債利回りは、2026年1月末では2.24%、選挙投開票翌日の9日の終値は2.275%でした。これがさらに上昇することが予想されるのです。企業の金利負担も増え、また固定金利で住宅ローンを借りようとする人にも悪影響が出ます。

