「密輸船護衛」を副業にした中国海軍

江沢民は「党の指導者」であったにもかかわらず、非難された。江沢民は賄賂の好きな、権力志向と拝金主義の官僚を登用したのだ。江沢民の時代、中国共産党は腐敗と愛人が蔓延する好色拝金時代を迎えた。

江沢民 中国共産党中央委員会総書記(1989~2002)
江沢民 中国共産党中央委員会総書記(1989~2002)(写真=Kremlin.ru / Roman Kubanskiy/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons

「中国人民大学危機管理研究センター」2012年の調査(「官僚イメージ危機報告書」)によれば、汚職官僚の95%に愛人がいたといわれる。江沢民自身にも愛人がおり、有名歌手の宋祖英がその調査報告書に含まれていた。

ただ、徐才厚と郭伯雄は、習近平にとって潜在的な政敵だったので追い落とされた。

2015年4月、軍制服組の最高位をつとめた郭伯雄・前中央軍事委員会副主席の身柄を拘束し、汚職の疑いで取り調べを始めた。その前に郭の息子、郭正鋼・浙江省軍区副政治委員(少将)を収賄容疑で立件し、正鋼夫人の呉芳芳も拘束した。

父親が軍事委副主席だった立場を利用して、多額の賄賂を受け取り、昇進や軍用地の民間転売などで便宜をはかっていたのだ。こうした軍の腐敗は江沢民が軍の副業を黙認し、というより奨励し、ついには密輸船を海軍艦艇が護衛し、税関も買収されてフリーパスするという未曾有みぞうの「廈門あもい事件」まで発生した。

習近平「汚職粛清」の実態

また、江沢民は軍を手なずけるために上将辞令を乱発して、軍の歓心をカネで買った。江沢民時代の上将は実に62名にものぼり、そのポスト獲得相場は1億円とも噂された。

同じ時期に軍事委副主席だった徐才厚は2014年に党籍を剥奪され、2025年3月に北京の病院で死亡した。

宮崎正弘『地獄の中国』(ワニブックス)
宮崎正弘『地獄の中国』(ワニブックス)

ついで公安系を牛耳ぎゅうじっていた周永康しゅうえいこうを拘束し、汚職で起訴した。陣頭指揮は王岐山おうきざんがとった。王岐山は汚職追放に辣腕らつわんを振るったが、粛正の対象は習近平の政敵の派閥だけに絞り込んでいたのである。温家宝一家も取り調べを受けた。

最初は王岐山の摘発活動に国民は喝采を送ったが、やがて王岐山一族の海南集団の大規模な金融詐欺が発覚すると、人気を失った。

習近平の国家主席就任前に最大の政敵とされた薄熙来はくきらいは、夫人の英国人殺害事件に連座するかたちで失脚していた。

この薄と周永康は親密な間柄とされ、いずれも習近平にとっては専制政治の障害になる人脈だったのだ。

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