汚職は中国の伝統文化
2025年10月に開催された四中全会で、懸案だった中央軍事委員会の3名の欠員が補充されなかった。張升民の副主任昇格が発表されただけである。
習近平は福建閥の軍人たちを抜擢し、そのなかの8名を中央委員にまで押し上げた。彼らが自分のボディガードと考えてきた福建閥を率いてきたのは苗華である。
福建閥、すなわち南京軍区の幹部らが面従腹背であったことに衝撃を受けた習近平は前国防相の李尚福、その前の国防相の魏鳳和も失脚させた。これら一群の忠誠組の粛正は毛沢東が「朋友」として「後継者」と指名した林彪の粛正を彷彿とさせるほどの重大事件なのだ。
福建閥(南京軍区は台湾攻撃担当。福建閥とは広く習近平の福建省時代の部下たちを指す)を一斉に失脚させたが、その理由が「重大な党規違反」「汚職」という言い分はオカシイだろう。
なぜなら「汚職は中国四千年の文化」であって誰もがやっていること。忠誠を誓ってきた部下を汚職などの理由で失脚させるはずはないではないか。
国家主席に上り詰めた胡錦濤の不遇
もう少し過去に遡ってこの問題を検証しておく。
習近平が反腐敗を政治利用して「政敵」の粛正を始めたのは江沢民院政時代の胡錦濤閥を圏外へ追いやることからだった。「胡錦濤の10年」というのは煎じ詰めて言えば「江沢民院政」であり、軍も江沢民が任命した軍人たちのピラミッド構造になっていた。
エンジニア出身の胡錦濤は、名前は軍事委員会主席だったが実権は何もなく、胡錦濤の指示を受けて動く軍閥はなかった。軍はいつまでも共産党に忠誠を誓う旧態依然の軍ではなく「国軍」とすべきだとする議論も軍論客の一部にはあった。国家に所属しない軍は私軍となり、軍閥化する。近年では袁世凱、張作霖、閻錫山をみれば明らかだろう。
江沢民から胡錦濤時代に軍事委に君臨したのは徐才厚と郭伯雄だった。江沢民は、鄧小平に媚びへつらい、それを基軸にせっせと人脈を広げ、軍人を腐敗させて籠絡し、そうした工作によって権力を掌握した。

