85歳になって感じる「体の衰え」

とはいえ、体の衰えはやはり抗しがたいものがあると感じています。自分を取り巻く環境の変化は、慣れである程度カバーすることができますが、体や脳の機能低下はさすがにそうはいきません。あがいたところで止めることはできないので、収縮を遅らせるくらいのことができそうな対策に努めています。

さすがに劇的な効果が期待できるものはないので、散歩を欠かさないとか、意識して階段を使う程度の、収縮への抵抗のためによかれと思うことを愚直にやり続けています。地味で効果が見えにくいことを続けるのはたいへんですが、愚直な努力が確実に力になることを失敗への対策から学んでいるので、役立っていると信じて日々励んでいます。

失敗から学んだことは、このように世界の収縮や、老いによる衰えへの抵抗に役立っています。失敗の研究を始めた当初は、そんなことをまったく想像していませんでした。新たな発見があるのはうれしいもので、楽しみながら毎日を過ごすことができています。

緑の背景と年上の男性
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新しい職種への転職限度とは

以前、自分の世界の拡大と収縮を、推論を使って定量的に示そうと試みたことがありました。そのときの目的は、人の能力の変化を数量的に示して理解することでした。これはそのまま自分の世界の変化として考えることができるので、参考までに紹介することにします。

これを行うときに注目したのは、記憶の能力と、マネジメントの能力の二つです。それぞれ「新しいことを吸収する能力」と「他人をその気にさせる能力」というふうに言い換えることができます。そして、この二つの働きによって、自分の世界は拡大し、また収縮していくものと考えました。

当然のことですが、記憶の能力は年を取るにつれて落ちていきます。ピークを25歳とし、5年で半分になるという前提で計算すると、60歳を迎えたときには128分の1にまで低下します。

一方のマネジメントの能力は、経験を積むことで得られるものです。そのための努力をすることが条件ですが、「人をたぶらかす能力」や「人をその気にさせる能力」は、年を取るごとに増していきます。こちらも25歳を起点として、5年で5倍になると計算しました。これでいくと60歳を迎えた頃には、7万8125倍になります。