2つのグラフが交わる年齢
2つをグラフ化して合わせると、年々下がっていく記憶の能力と、上がっていくマネジメントの能力の線は、40歳の少し手前で線が交差します。そこから得られたのが、まったく新しい職種への転職限度は38歳くらいという一つの解です。
徐々に衰えていく記憶の能力を、徐々に上がっていくマネジメント力でカバーし、トータルで見たときにバランスがいい状態と言えるのがこれくらいと考えました。これを過ぎると、独力でゼロから新しいことを始めるのはなかなか難しくなります。
これらはあくまで推論に基づくもので、60歳を上限として計算しています。想定した領域を大きく上回っている私のようなケースでも参考になるかはわかりません。80歳を過ぎた私の記憶の能力は、計算上はピークのときの2048分の1で、これでは記憶に関するいろいろな問題が出てくるのも当然です。
一方のマネジメントの能力は、計算上は約5000万倍になりますが、実際にはどこかで加齢を原因とする著しい能力低下が起こるでしょうから、あまり参考にならないでしょう。
失敗の持つ不思議な力
失敗とは本当に不思議で面白いものです。自分の身に起こったら痛く辛いし、不安で不快にさせられます。それが嫌で未知のことへの挑戦はとくに避けられがちです。経験のない未知のことを行うと、最初はほとんど失敗するからです。しかし、それは貴重な学びの機会になり得るものなので、恐れずに挑戦した人はステップアップのチャンスを得ることができます。
加えて、自分を中心とする世界を拡大するチャンスにできるのが失敗です。これもまた、「失敗を恐れずに挑戦した人が得られるご褒美」の一つです。望んだ結果が得られたら最高ですが、得られなくても挑戦したこと自体が世界を広げる機会になります。これらは、失敗学の大事な知見として、ぜひみなさんに伝えたいことです。
いまから40年ほど前に、私もそのことを身をもって学びました。当時はすでに東京大学工学部の教授になっていましたが、まだ失敗についての研究を始める前のことです。
大学というのは世間から隔離された、世の中の動きとまったくちがった方向の研究をやっていてもそれが許されてしまう怖い場所です。狭い分野でたいした成果もない研究を行っていても、同じような研究者たちの間で互いに認め合うことでなんとなく成り立ってしまいます。

