どこでもできないワインづくりにこだわった

江上隆夫『スロウ・ブランディング 記憶から価値をつくる これからのブランドの教科書』(朝日新聞出版)
江上隆夫『スロウ・ブランディング 記憶から価値をつくる これからのブランドの教科書』(朝日新聞出版)

日本ワインを代表するココ・ファーム・ワイナリーのことを書いてきましたが、お気づきでしょうか。いわゆる「ブランディング」の話は一切していません。

池上さんから頂いたメモには次のように書かれてありました。1984年当時、ブランドをつくるという考えはありませんでした。こころみ学園の園生たちを中心にしたワイン造りにおいては、あらゆる面において本物であることを心がけてきました。

ワインを楽しくつくり、ワインづくりがもたらすひとつひとつを楽しみながら。ココ・ファーム・ワイナリーが行った、いわゆる「ブランディング的な作業」はわずか次の3点です。

・ワインラベルやロゴを串田くしだ光弘みつひろさんにお願いしたこと。
(グラフィックデザイナー。父は哲学者の串田くしだ孫一まごいち氏、兄は演出家の串田くしだ和美かずよし氏)

・ワイナリーの考え方を示すことばを木村きむら博江ひろえさんと考えたこと。
(翻訳家。『ブルース、日本でワインをつくる』〈2014、新潮社〉の聞き書きを行った方)

・建物や印刷物を考えるときに四つのポイント「シンプル、シック、シンメトリー、スモール」を大事にしてきたこと。

つまり、ほとんどの力は「ここでしかできないワイン、ほかのどこでもできないワインをつくること」に注がれてきたのです。「ワインとしてあらゆる面において本物であること」を目標にわき目も振らず。

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