徹底的な手仕事が生んだ高品質なワイン

もちろん、ワインのための畑仕事はこれだけではありません。春夏秋冬、季節ごとに無数の手仕事があります。

ブドウを狙うカラスを追い払う園生(提供=ココ・ファーム・ワイナリー)

春には葡萄の伸び始めた枝をいい方向に伸びるように麻でもやい、針金で結わえる「誘引」の仕事。夏には葡萄の房の傘や袋掛け。虫や病気を防ぐために、園生たちが一房ひと房に一枚ずつ、20万枚の傘や袋を掛けていきます。秋には熟した葡萄の収穫。朝早くから総出で葡萄を摘み取ります。

摘み取ったあとは、良い実と傷んだ実をより分け、選別する作業。100人を超える園生たちは年齢も10代から80代まで、それぞれ自分に見合った仕事をして、ワインづくりに参加します。

ココ・ファーム・ワイナリーは徹底的な人の手仕事によるワインづくりで知られています。そのことはこころみ学園の園生にとっても、ワイン好きにとってもとても幸運なことです。

どうして、こんな急斜面かというと平らなところは買えなかっただけで(笑)。
でも、結局、斜面だと日当たりはいいし、水はけはいいし、葡萄づくりに適しているんです。
もともと私の母は酒屋の娘で、祖母の実家が造り酒屋で。
父の実家は果樹園で、父は三歳からお酒を飲んでたなんて家系ですから(笑)。
それに葡萄だったら実を売ることもできるし、ジュースにもできる。
当初、お酒の免許がなかったときには葡萄ジュースも売っていたんです。
園長先生のジュースは一週間ぐらい経つと美味しくなるね、とか言われて。
たぶん自然発酵していたんでしょうね。

10年の助走期間

ココ・ファーム・ワイナリーのワインづくりには、カリフォルニアでワイン・コンサルタントをしていたブルース・ガットラヴさんが関わっています。

彼は1989年に来日し、醸造の指導を行ったあと、ココ・ファーム・ワイナリーでのワインづくりに深く関わることを決断し、とうとう日本に移住。1999年にココ・ファーム・ワイナリーの取締役になります。

彼と川田園長や池上さんが目標としたのは「ここでしかできないワイン、ほかのどこでもできないワインをつくること」であり、そして「ゴールを設けず、いいワインをつくるため、とにかくできるだけやってみること」でした。こうして辿り着いたのが次のようなワインづくりです。軌道に乗るには10年以上の歳月が必要だったと言います。

・瓶の中で二次発酵させないための方法として熱で酵母を殺す「火入れ」方式ではなく、難しいがアロマを残す「無菌濾過の生詰め」方式でつくる。
・「培養酵母を使った低温発酵」ではなく、発酵に時間もかかりリスクの高い「野生酵母を使った自然発酵」方式でつくる。
・一本あたりの単価は高くなるが、100パーセント日本の葡萄から、質の高いワインを適度な量でつくり、適度な利益を上げる。

池上さんにお聞きして本当に興味深いと思ったのが「野生酵母」でのワインづくりです。私は単純な先入観で一、二種の酵母が働いているのではないか、と考えていましたが違うのです。