酵母の秘密
たまたま機会があり、東京大学大学院の研究室の方がココ・ファーム・ワイナリーの発酵中のワインから採取した酵母を分析したところ、この土地に根付いた野生酵母が20種以上も働いていることが判ったのです。
その中のいくつかをDNA検査し、どの土地のものに近いのかを調べたそうです。すると、たとえば「ハンゼニア・スポラ・ウバラム」という酵母のDNAはブラジルのコーヒー農園のハマダラカ由来のものに近く、「サッカロミセス・セレヴィシエ」は喜望峰のある南アフリカの葡萄果汁から検出された酵母に近いということが判ったそうです。
地球上にいまから20億年前に発生した微生物をはじめとして、植物・動物などのたくさんの生きものが、ココ・ファーム・ワイナリーのワインづくりにも関わっているというのが池上さんの見立てです。
これらの酵母は一斉に働くのではなく、ある酵母が働いているときは、他の酵母が休んだり、いくつかが同時に働いたりと、その機序はなかなかうかがい知ることはできません。ブルースさんの愛弟子とも言える現醸造責任者の柴田豊一郎さんは、この酵母たちを「まるで園生のようだ」と表現したそうです。
このような取り組みから生まれるオリジナルのワインは、私の表現でお許し願えるなら、酸とタンニンのバランスのいい「きれいな味のワイン」です。しっかりした味ですが、何か軽みのある澄んだ品の良さを感じます。
日本ならではの味わいを活かしたワイン
もちろんココ・ファーム・ワイナリーのワインはいくつもの種類があり、葡萄の品種、栽培方法、醸造方法、貯蔵方法などにより、製品の味わいは多様です。しかし、明らかに欧米の銘醸地やチリ、オーストラリア、南アフリカなどのワインとは違う独自の味がします。
まさに日本の、足利の、この地でしか生まれないワインになっているのです。それは、この北関東の足利の地、足利の自然への敬意を表したワインであり、味なのです。いまも、ブルースさんは北海道の空知で家族とともに「10Rワイナリー」を運営しながら、月に一度、ココ・ファーム・ワイナリーに通っています。


