大企業ばかり10社――1次面接で全滅

大阪のとあるレンタル会議室に現れた山中健一郎君(仮名・23歳)は、短髪にクールビズといういでたちのさわやかな青年だった。フケだらけの頭をバリバリとかきながら……という“金田一”的な人物をどこかで想像していた筆者にとっては、1つ目の“意外”だった。

「京都大学の工学部出身です。いまは修士課程で情報解析の研究をしています。スポーツですか? 高校時代には弓道をやっていて、大学に入ってからもずっと武道を続けていました」

文武両道、質実剛健。会話のスタートも申し分ない。またまた意外である。

「大学3年のおととし、就職活動をしたんですが、エントリーシートを10社送って、結果は1次面接で全滅です。で、自分なりに問題点を整理してみたんですが、失敗の原因は主に3つありまして、1つは化学、医学、インフラなどの大企業ばかりを狙ったこと、2つ目は面接の練習を怠っていたこと、3つ目は友達や先輩などからの企業情報の収集をしていなかったこと、です。やはりどこかに『自分は京大生だから』というプライドと慢心があったと反省しています」

説明も理路整然としてわかりやすい。あえて言えば、やや理屈っぽい印象があることと、丁寧すぎる注釈が会話のところどころにはさまれるきらいがあることが気になったが、これも理系出身者共通の傾向で、不採用の理由にはなりそうにない。

だが、山中君本人は「1次面接での敗退」という現実に大きな挫折感を覚えた。

「1次面接は集団面接やグループディスカッションなのですが、“リーダーに必要な要素とは何か”とか“新規事業で店を出すことになったが、どんな業態なら成功するか”など、いろいろなお題が出されて、それに対する自分の考えを面接官に話したり、学生同士でディスカッションしたりするんです。これが自分にはうまくできなかった……。普段からそういうテーマについて考えていなかったということもありますし、自分の考えをきちんと説明できなかったという部分もありました」

山中君は学卒での就職を断念し、修士課程に進学。就職活動へのリベンジを開始した。同時に自分の課題である「面接力」を磨くため、友人の紹介である就職セミナーに参加。そこで知り合ったキャリア・コンサルタントが、株式会社ASキャリア取締役の浅田実果氏(写真左)だった。