書店業界の苦境が続いている。そんな中、会計ソフト会社による”異色の書店”が注目を集めている。24時間営業やAI店員など従来の書店にはない施策を導入し盛況という。書店に未来はあるのか。フリーライターの松田晋吾さんが取材した――。
透明書店代表の黒田愛実さん
筆者撮影
透明書店代表の黒田愛美さん

24時間営業、AI店員という異色の書店の正体

東京都台東区・蔵前地区。大通りから路地に入ると、築年数を重ねたであろう中低層ビルが立ち並ぶ。その一角に店を構えるのが透明書店だ。かつて倉庫として使われていた空間をリノベーションし、会計ソフト「freee会計」を手掛けるフリー株式会社が2023年4月に開業した。約70平方メートルほどの店内には、スモールビジネス関連の書籍やエッセイ本など約2500冊が並ぶ。

無人営業中の店に入って、すぐに迎えてくれたのは、ChatGPTを搭載したAI(人工知能)の副店長である「くらげ副店長」だ。私が「独立したい人の本を教えて」とキーボードに打ち込むと、おすすめの本と、置き場所を教えてくれた。気に入った本を見つけると、キャッシュレス決済で会計は完結する。

AIのくらげ副店長。ほんのおススメを教えてくれる
筆者撮影
AIのくらげ副店長。おススメの本を教えてくれる

透明書店は、25年4月から24時間営業を始め、毎週月曜日と木~日曜日の午後7時~翌日正午のほか火、水曜日の終日を無人化した。透明書店代表の黒田愛美さんは「早朝や飲み会後に立ち寄るお客さんが多く、自分と向き合うようなジャンルの本が売れている」と話す。防犯カメラで店内を見守っているが、現在のところ万引きは起きていない。

従来は人的リソースの制約から、営業は週の約20%に限られていた。無人営業を導入することで、これまでシャッターが下りていた時間帯を“稼ぐ時間”へと変えることに成功した。

黒田さんは「テクノロジー企業だからこその挑戦だった。設備投資は防犯カメラの設置費用など十数万円のみで、無人営業時の売り上げは全体の25%程度を占めるようになり、収益への貢献は大きい」と手応えを語る。