どんな仕事も5割以上は人間関係

本書を読むと、相手が個人であれ会社であれ、ビジネスの根底にあるのは、「他者を理解し、自分を理解してもらう」という相互理解であるということがよくわかる。しかし、たいていの場合は相手を理解する前に売ろうとし、かなり経験のある営業マンでも、自分を理解してもらうということまでは思い至らない。だからこそいつの時代においても営業という仕事の最初にして最大の壁は「断られること」なのだ。

僕はどんな仕事も5割以上が人間関係だと思っている。純粋にある業務だけを達成すればよい環境などあり得ず、社内の苦手な人間や、難しいお客様を相手にしながら状況を切り抜けていく力が要求される。そのためにお金が払われるといってもいいくらいだ。相互理解には時間がかかる。断られたからといって毎回落ち込んでいては前に進めない。優秀な営業マンは共通して「断られることがデフォルト」というマインドセットを持っていて、そこから立ち直る自分なりの方法を持っている。

営業という仕事は、資格もいらず誰でもできるという理由で不当に低く見られている面がある。しかし、本来は優れた人がいちばん稼ぐことができる職業だ。欲望のせめぎあいのなか、勝った者が報われるというプリミティブな競争社会でもある。頭でっかちのエリートはそういう世界を本能的に恐れている。本書の第8章にHBSであまり人気のない営業の授業を担当しているハワード・アンダーソンの話が出てくる。彼はこう言った。「セールスは、結果が測れる唯一の分野だ。それがMBAの学生には死ぬほど恐ろしいんだよ」。誰にもチャンスがある世界というのは、とんでもなく厳しい世界でもある。まさに、営業は生きることそのもの、人生の縮図なのだ。

※本稿は『なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか』(フィリップ・デルヴス・ブロートン著、関美和訳)の解説を抜粋したものです。