お金のプロはどんなお金の「使い方」をするのか。元・みずほ証券チーフマーケットエコノミストでマーケットコンシェルジュ代表の上野泰也さんは「お金を貯めること自体に意味はない。お金を使って得られる幸せには大きく二つの側面があることを知ってほしい」という――。

※本稿は、上野泰也『本当の自由を手に入れるお金の減らし方』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

コインと散水プラント
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「お金が増えること」で満足してはならない

【主な登場人物】

上野泰也:マーケットコンシェルジュ代表。元・みずほ証券チーフマーケットエコノミスト。エコノミストランキングで6年連続第1位を獲得するなど、お金のプロ。

ミドリ:中学2年生。読書が好き。堅実でしっかり者。最近貯金をしている。本記事で父(上野泰也)からお金の本質を学ぶ。

ミドリ:さっき「貯めること自体が目的になるのは違う」って言ってたよね。具体的に、何が問題なの? 預金通帳の数字が増えると、ちょっと嬉しいのは事実なんだけど。

上野:嬉しいのは自然だよ。数字が増えるのを見て安心する……それ自体は否定すべき感情じゃない。ただ、そこで満足を完結させてしまうと、本来の目的地にたどり着かない。お金は“道具”であって、道具を磨くことは準備にすぎないからだ。準備を丁寧にやるのは大事だが、準備だけをゴールにしてしまうと、いつまで経っても出発しないままになる。

ミドリ:出発しないままの登山者、みたいな?

上野:そう。山小屋で装備を点検して満足している状態だ。装備を整えるほど安心には近づく。だけど、安心は「マイナスをゼロに戻す」ことに近い。そこから先の「プラス」に進むには、外に出て一歩を踏み出す必要がある。お金も同じで、数字が増えることは不安の解消には役立つが、幸福の創出とは別物だ。

貯めることは「目的」を達成するための準備段階

ミドリ:じゃあ、貯めることって無意味なの?

上野:無意味ではないよ。大切なのは「位置づけ」だ。貯めることは目的ではなく、目的を達成するための準備段階。だから、貯める前、あるいは貯めながら「何のために」を仮置きでもいいから決めておくことが必要だ。仮置きは変えていい。だから、まずは置く。

ミドリ:仮置きでもいい、っていうのは気が楽だね。

上野:多くの人は「一度決めたら最後まで同じでなければならない」と思い込む。でも実際は、やってみて、どうにも合わなければ、修正すればいい。目標は生き物だ。年齢や環境、好みが変われば、ふさわしい目標も変わる。だから「貯めるために貯める」に陥らないためのコツは3つだ。1つ目は、目標を仮置きすること。2つ目は、小さく試すこと。3つ目は、手応えに合わせて柔軟に変えること。

ミドリ:小さく試すって、どういうことを想定してるの?

上野:たとえば「海外に行ってみたい」なら、いきなり大旅行でなくてもいい。近場の短期旅行で試す。経験して、嬉しかったこと・疲れたこと・次に工夫したいことなどをメモしておく。次は少しだけ距離や時間を延ばす。目標に向けた出費を分割して、トライ&エラーで質を高めるんだ。これは勉強でも趣味でも同じだよ。

ミドリ:なるほど。1回で完璧を狙わないのね。