後発商品「混ぜ込みわかめ」の挑戦
丸美屋と聞いて「のりたま」「とり釜めしの素」「麻婆豆腐の素」のいずれか(あるいは全て)を思い浮かべる人が多いのではないだろうか。
いずれもカテゴリーでトップシェアを誇り、すべてが50年以上も売れ続けている超ロングセラー商品である。
しかし丸美屋には「混ぜ込みわかめ」という、これらの主力商品とは少々出自の異なる大ヒット商品があるのをご存じだろうか?
「混ぜ込みわかめ」は全種類の合計では丸美屋の不動のセンターである「のりたま」を凌ぐ売上高を記録しているのだが、上記3点がいずれも業界に先駆けて開発された商品であるのに対し、先行して発売された他社のおむすびの素に遅れること6年という、完全な後発商品だったのである。
「混ぜ込みわかめ」はいかにして先行商品に追いつき、追い越し、トップに立ったのか。そこには、現在のポップなパッケージからは想像もつかないドラマと、ひとりのマーケターの格闘があった。
「ふりかけのトップ企業」という慢心
「丸美屋はふりかけでやってきた会社なので、おむすびの素需要にはふりかけで対応できるという目算があって、参入に消極的だったのだと聞いています」
こう語るのは、丸美屋マーケティング部部長の丸山すみれさんである。丸山さんは、ふりかけのマーケティングを担当して22年という異色のキャリアを持つ、ふりかけ業界の生き地引的な存在だ。
1982年、おむすびの素というかつて存在しなかった新しい商品を世に送り出したのは、ふりかけメーカーではなく、ある調味料メーカーだった。ふりかけ業界の雄・丸美屋は、この新しい商品を少々甘く見ていた節があったようだ。
丸山さんは言う。
「私の入社は96年なので正確なところは分かりません。ただ、競合の先行商品は、分包スタイルで具も細かめでした。当時はふりかけでおにぎりを作るのも一般的だったため、対抗できると考えていた、と聞いています」
分包で具材が細かいから対抗できるとは、何を意味するのだろう?
「丸美屋はふりかけをチャック付きの大袋に直詰めするのが得意なのですが、これには意外に技術が必要なのです。先行していたおむすびの素は、うちのようなチャック付きの大袋ではなく、小分けになっていました。具材の細かさなども見ると直詰めすることは難しかったのかもしれないと思いました」
丸山さんによれば、ふりかけの世界では、味もさることながら「振り出し」に高度な技術力が要求されるというのだ。


