いちばん楽しいときが「売る」タイミング

事業を閉鎖するのは非常にもったいないことです。取引先、お客さま、従業員にも迷惑がかかります。できれば、親族への承継にて会社を継続したいところですが、実際には最近、親族への承継が難しくなっています。将来性のないビジネスを、自分の親と同じような年齢の古参幹部と一緒にやろうなどという経営者の子どもたちが少なくなってきているからなのです。

そこで考えておくべきことが、事業を売却すること、いわゆるM&Aによるexitです。M&Aはタイミングが重要なので、なかなか事前に計画することは難しい。しかし、少ないタイミングを確実に活かすためにも、いつでも「レディの状態」にしておくことが重要です。会社をいちばん高い値段で売ることができるのは、売上・利益が最も伸びているとき、経営者としていちばん楽しいときです。そのときに、あなたの会社を買ってくれる先をいったん真剣に探してみて下さい。そして、客観的なあなたの会社の価値を知って下さい。その金額以上にこの先稼ぐ自信がなければ、その時が会社を売るベストのタイミングです。

今日、「あなたの会社を買いたいから、経営戦略や財務状況を説明してほしい」と依頼されたら、依頼主が納得できる説明ができますか? そして自分がいなくなった後にビジネスを継続できるような後継者の育成や、組織づくりができていますか? こういった準備を万端にしておくことが、「レディの状態」ということです。「この会社だったらお金を出しても良い」と誰もが思えるような状態になれば、いつでも会社を第三者に譲ることが可能になります。

(企画協力=アルテ総合法律事務所(村井淳也・弁護士/渡邉 論・弁護士))
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