AIを導入してもムダな業務はなくならない

「やめたいのに、やめられない」

誰しもが、そうした業務や仕事に悩んだ経験があるはずです。誰が読んでいるかわからない資料の作成、発言しない会議、非効率で複雑な業務手順……。職場にはあらゆる場所にムダがはびこっているのではないでしょうか。

私がコンサルタントとして得意とするのが、経理、総務、人事などのバックオフィスの業務改善です。とくにバックオフィスの業務は、営業や生産、調達などの様々な部門の要望を受け入れ続けて、仕事がどんどん増えていき、業務手順が複雑になっていきます。

バックオフィスに限らずムダな作業や業務は放っておくとどんどん増えていきます。たとえるなら、デスクトップ上のアイコンと同じです。どれだけ整理したとしても、気がつくとまた増えてしまいます。片づけた部屋が徐々に散らかっていくように、物ごとを放っておくと秩序を失うのは、ある意味では自然の摂理です。

不要になった時点でその業務をやめる。それは、合理的でわかりやすい業務改善方法ではあるのですが、ことはそう単純ではありません。なぜなら、バックオフィス部門がムダだと感じる業務が、営業や生産にとっては必要な仕事かもしれないからです。

加えて厄介なのが、人間の心理です。人は、変化よりも維持を望みます。「この業務はムダだから、やめてしまおう」と提案したら、下手をすれば上司に怒られたり、同僚に煙たがられたりするかもしれません。関係各所と調整する手間もかかります。それなら、ムダかもしれない仕事をガマンして続けたほうがいいと考えがちです。

なかには、デジタルトランスフォーメーションや生成AIの発達で、近い将来ムダな業務から解放されるのではないかと期待する人もいるでしょう。確かにデジタル技術の導入は業務を効率化させます。しかしどんなにテクノロジーが発達しようが、業務を行うのは人間です。

「社長案件だから何とかして」「昨日は突発休暇だったのでこの申請は通してほしい」といった人間くさい事情で、仕事は徐々に複雑になり、ムダは増加していきます。また一度はじまった業務や作業は組織の力学で簡単には変えられません。そう考えるとデジタルトランスフォーメーションや生成AIによって、業務が改善されて、ムダがゼロになるというのは幻想にすぎません。むしろ業務改善には、アナログな対応や、組織内の人間心理を考慮する取り組みのほうが、効果が期待できます。

そこで、必要になるのが、ムダな業務を捨ててゼロにするのではなく、全体の形は維持しつつも、贅肉をそぎ落としていくように、ムダを少しずつ削り取っていくスキルです。では、必要な業務とムダな作業をどう見極めて、どのように削るのか。

ここでは、資料作成、会議、問い合わせ対応の3つに絞って、ムダが増える原因と削る技術を紹介していきます。