12月21日に京都で開かれる全国高校駅伝。3連覇を狙うのは、2000年以降の箱根駅伝に59人ものOBが出場した長野県の佐久長聖高校だ。なぜ、圧倒的な強さを維持できるのか。男子マラソンの大迫傑らを育てた高見澤勝監督に、「日本一厳しい練習」と寮生活の秘密をスポーツライターの酒井政人さんが取材した――。
全国高校駅伝男子で2年連続4度目の優勝を果たした佐久長聖のアンカー石川浩輝=2024年12月22日、たけびしスタジアム京都
写真=共同通信社
全国高校駅伝男子で2年連続4度目の優勝を果たした佐久長聖のアンカー石川浩輝=2024年12月22日、たけびしスタジアム京都

全国高校駅伝3連覇なるか、「日本一厳しい」佐久長聖

全国高校駅伝で4度の優勝を誇る佐久長聖高(長野)。両角速監督(現・東海大駅伝監督)から指揮官の“タスキ”をつないだのが、高見澤勝監督だ。

高見澤監督は、佐久長聖高が初めて全国高校駅伝に出場したときのメンバーで、山梨学大でも中心選手としても活躍。実業団生活を経て、2008年にコーチとして母校に戻ってきた。そして2011年に恩師から監督の座を引き継いだ。

全国高校駅伝は2017年にチームとして2度目(監督としては初)の栄冠に輝くと、2023年と2024年に連覇を達成。毎回恒例の舞台となる京都・都大路で一昨年にマークした「2時間1分00秒」は日本高校最高記録となる。

佐久長聖高駅伝部が素晴らしいのは高校卒業後も大活躍している選手が多いことだ。箱根駅伝は2000年からの出場ながらOBが59人出場(※2000年以降に限定すればダントツトップ)。そのなかには男子マラソンの日本記録を3度塗り替えた大迫傑、男子1万mの日本記録保持者・鈴木芽吹らがいる。

なぜ圧倒的に強いのか、その秘密

佐久長聖はなぜ強いのか?

高見澤監督は「日本一厳しいのが強さの秘密です」という。

佐久長聖高の選手たちは寮生活を送りながら、トレーニングに励んでいる。朝は5時10分に起床。朝練習で10km弱を走り、学校の授業を受けて、本練習という流れだ。消灯は21時10分(※ストレッチや補強など、ひとりで静かに過ごすのはOK。食堂では22時50分まで勉強できる)。高校生が手放すことができないスマホを使用できるのは本練習が終わって消灯までの2時間ほどしかない。

現代の高校生としてはかなり「ストイックな生活」を過ごしているが、そこにこそ佐久長聖の「強さ」があるという。

「入学前の選手には、『佐久長聖高校駅伝部は日本一厳しいよ』という話をしています。走るための能力は日々のトレーニングで鍛えることができます。しかし、メンタル面は日々の練習だけでは強化できません。『我慢する力』や『あきらめない心』は日々の生活や取り組みのなかで育てていくものだと思っています。だからトレーニングを厳しくするよりも日頃の生活を厳しくする。それが佐久長聖高校駅伝部の『日本一の厳しさ』ではないでしょうか」

選手たちに自由時間はほとんどない。しかし、高見澤監督はあえてタイトなスケジュールを組んでいるという。

「暇を与えないのではなく、これが『鍛える場』なんです。時間がないのであれば、常に先を考えて、前倒しで準備していく。効率よく過ごす方法を子供たち自身で見いだしてほしいと思っています。窮屈な生活ですが、慣れてしまえば、『時間がない』ではなく、『時間は自分で作るもの』に変わっていくんです。事前準備はどんなことをすればいいのか。先輩から学ぶこともありますが、自分たちでも考えないといけません。日々のタイトな生活のなかで、我々は鍛えていると自信を持って言えます」