※本稿は、山脇由貴子『夫婦はなぜ壊れるのか カウンセリングの現場で見た絶望と変化』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
※事例は全て仮名です。
「すぐやる」が苦手な夫にイライラする妻
相談に来たのは30代のご夫婦でした。妻の尚美さん(32歳)、夫の孝彦さん(34歳)。結婚6年目、初回から揃っての相談です。子どもは4歳の娘と1歳の息子の2人。お二人ともIT関係の仕事で、コロナ禍以降の出勤は週1回だけ。テレワークが基本との事でした。
「とにかく、私が夫にイライラして仕方がないんです」尚美さんは言います。特に2人目が生まれてからイライラがひどくなったそうです。
「夫は家事も育児も手伝ってはくれますけど、何か違うんです。まず『やって』と言った事をすぐにやってくれないんです。『ゴミ捨てて来て』と言うと『うん』って答えますけど、スマホを見ていて立ち上がろうともしない。何度か言って、ようやく立つって感じです。いつもです」
これは多くの妻から聞くお悩み。皆さん「なんですぐやらないのか意味が分からない」と言います。尚美さんの話は続きます。
「あと、子どもがなかなかご飯を食べようとせずにぐずっていると『じゃあ、ジュース飲む?』『バナナ食べる?』ってきつい口調で次々たたみかけて、子どもが余計にぐずるんです。『しばらく放っておけば、そのうち食べるから』って言ってるのに、たたみかけ続けるので、結局私があやして食べさせることになって……」
何をしても怒られてしまう現状
「寝かしつけもそうです。寝かしつけを頼んだのに、しばらくすると『寝ないから』と言って、子どもをリビングに戻して遊び始めちゃうんです。そんなことしたら、翌朝起きなくて大変になるのに……」尚美さんの話はさらに続きます。
「片付けもそうなんですよね。食器の置き場所が毎回違ったり。『探すのが大変だから』って何度も言っているのに。掃除も、四角い部屋を丸く掃除機かける感じだし、食器洗いも汚れが残っていたり、テーブルを拭いてもらっても、適当なんですよね。子どもの食べこぼしが残ったままだったり。電気のつけっぱなしもドアの開けっぱなしも多くて、イライラします」
夫の孝彦さんは妻の隣で黙り込んでいます。おとなしそうな方で普段から口数は少ないそう。私が、「ご主人はどうですか?」と尋ねると、少し考えてから口を開きました。
「僕としては、精一杯手伝っているつもりなんですけど……。いつも怒られてばかりで。何をしても怒られるので、どうしたらいいか……」
「カウンセリングに来るのは嫌ではなかったですか?」妻主導でカウンセリングに来たご夫婦の夫に、私が必ずする質問です。
「嫌ではなかったです。毎日怒られてばかりで、どうにかしたいと思っていたので、第三者に入ってもらって何か変わるなら、と」

