1999年の奇跡:39年と6カ月が同時にゴール
ここで、薬事行政史における興味深い事実を紹介したい。
▼バイアグラ(ED治療薬)
● 米国での発売:1998年
● 日本での承認:1999年(約6カ月後)
▼経口避妊薬(ピル)
● 米国での承認:1960年
● 日本での承認:1999年(39年後)
つまり、39年間かけて慎重に検討していたピルと、半年で承認されたバイアグラが、日本ではまったく同じ1999年に承認されている。これは偶然だろうか。それとも、何らかの「調整」があったのか。真相はわからない。
世界標準との興味深い乖離
緊急避妊薬は90カ国以上で処方箋なしで購入できる上に、価格も比較的低く抑えられている。
▼世界の緊急避妊薬
● 西ヨーロッパ:1000円未満
● 北米・オーストラリア:2400円〜5000円
● スウェーデン、イギリス、オランダ等:一部機関で無料提供
● 日本(2025年まで):8000円〜2万円。条件:処方箋必要、未成年は保護者同意必要
日本の価格はとびぬけて高いことがわかる。一方、ED治療薬では、バイアグラの場合(処方価格)は、先発品かジェネリックか、用量(25mg/50mg)、購入するクリニック、錠数によって異なるが、1錠あたり数百円~2000円程度が目安と言われる。
以上のような優先順位はどのような基準に基づき決められ、また、大きな価格差はなぜ起きているのだろうか。
「安易な使用」の懸念は、なぜ片方だけに?
2020年、日本産婦人科医会の幹部は、緊急避妊薬について「“じゃあ次も使えばいいや”という安易な考えに流れてしまう」懸念を表明した。
論理としては理解できる。
では、同じ論理をED治療薬に適用すると、どうなるだろうか。「ED治療薬を気軽に使えると、男性が“じゃあ次も使えばいいや”と安易な態度になるのでは?」「25年くらい熟議してから承認すべきでは?」
しかし、そのような議論は確認できない。
「安易な使用」という懸念は、どうやら選択的に適用されるようだ。適用基準については、明確な説明がないため、推測するしかない。

