遠くの女性には惜しみなく、近くの女性には慎重に
2023年、日本政府はUNFPA(国連人口基金)の人道支援プログラムに2200万ドル以上(約34億円)を拠出した。
これらのプログラムは、世界各国の女性たちに避妊薬や緊急避妊薬を提供している。素晴らしい国際貢献である。
一つだけ気になるのは、当時、日本国内の女性は、その「人道支援対象」の薬に容易にアクセスできなかったという点だ。
海外の女性には積極的に提供しながら、国内の女性には慎重な検討を続ける。この配分は明らかに矛盾している。
「先進国」への、逆方向の助言
筆者が忘れられないエピソードがある。
数年前、日本の大学院に進学するスリランカ人女性が、友人たちからこう言われたという。
「日本に行くなら、念のため緊急避妊薬を持っていったほうがいいよ。日本では簡単に手に入らないから」
スリランカから日本へ、である。逆ではない。GDP世界第4位、G7加盟国、技術立国として知られる国への渡航に際して、いわば「途上国」から「必需品の持参」を勧められる。不思議な話である。
8年越しの朗報と、小さな但し書き
2025年8月29日、ついに緊急避妊薬「ノルレボ」の市販化が了承された(※)。10月20日には正式に承認された。年齢制限は撤廃され、パブリックコメントでは97%が賛成を示した。大きな前進である。(※)現時点では原則医師の診察が必要(一部試験販売あり)、発売する第一三共ヘルスケアが「今後改めて公表する」としている。
ただし、一つだけ条件がある。
「薬剤師の面前での服用を義務付け」
つまり、購入者は薬局のカウンターで、薬剤師の目の前で薬を服用する必要がある。
例えば、性暴力被害に遭ったばかりの女性が、他人の視線に晒されながら、「監視下」で服用する状況を想像すると、酷な義務であるように思える。ちなみに、ED治療薬にこのような条件は課されていない。プライバシーのある空間で、好きなタイミングで服用できる。

