現実味を帯びる商業化、その壁は
MH21(メタンハイドレート資源開発研究コンソーシアム)が3月に東部南海トラフ第二渥美海丘で行なった海洋産出試験は、一日平均2万m³という予想以上のガス生産量を記録し、エネルギー産業界を驚かせた。試験自体は水深1000メートルの海底のさらに300m下の生産坑井に砂が侵入したために6日間で打ち切られたが、メタンハイドレートからガスを採り出す技術は実用化へぐっと近づいた。
今後、2018年までに「商業化の実現に向けた技術整備」が行われる。ひょっとすると2020年東京五輪の聖火台の炎はメタンハイドレートのガスで維持されるかもしれない。では、向こう5年間で商業化の前提となる大量、長期安定的なガス産出技術が確立されたとしよう。そこから商業化に向けて、どのような「壁」があるのだろうか。
ポイントは、洋上の生産設備と開発体制だ。まず生産設備については、ハイドレート由来のガスも既存の天然ガスも主成分はメタンなので、従来の海底油田・ガス田の開発技術が応用できる。現在、世界の海洋における石油、ガスの生産設備には次のようなものがある。
海底資源を開発するには、生産施設を洋上に設置し、安定稼働させねばならない。水深が浅いところでは海底に固定させた構造物で石油、ガスを採掘しているが、水深100メートルを超えると、海底に設備を建造する費用が膨大になるので浮体式の構造物が使われる。固定式の構造物は水深300メートルが限界だといわれる。