リクルートがハマった「中途半端」な立ち位置
特に、女性の課金意欲の低さがゼクシィ縁結びには不利に働いたとおとうふさんは指摘します。
「男女平等が叫ばれる時代ですが、特にライトな出会いを求める層においては、女性が出会いにお金をかける文化はまだ根付いていません。これが有料モデルのゼクシィ縁結びには不利に働きました」
一方で、本気の婚活層はどうか。おとうふさんは続けます。
「本気で結婚したい若年層は、YouTubeやSNSで情報収集し、コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスを重視して、アプリを経由せずいきなり結婚相談所に行くケースが増えています。つまり、ライトに出会いを楽しみたい層は無料の大手アプリへ、本気で結婚したい層は結婚相談所へ――市場が両極に分かれた。ゼクシィ縁結びは、この中間に位置していたがゆえに、どちらの層も十分に取り込めなかったのではないでしょうか」
結婚式情報では盤石な地位を築いてきたリクルートですが、その川上にあたる「出会い」という領域では、信頼やブランド力だけでは戦えませんでした。
マッチングアプリ市場は、ユーザーのニーズが刻々と変化する世界です。機能のアップデート、UIの改善、口コミへの迅速な対応――これらに継続的に投資し、適応し続けなければ、たちまち競合に追い抜かれる。それはリクルートほどの企業でも例外ではありませんでした。
婚活は「デジタル」との親和性が低かった
リクルートが撤退する事業には、ある共通点があります。
リクルートは2025年8月、新卒向けのエージェントサービス「リクナビ就職エージェント」のサービス終了を発表しています。「ゼクシィ縁結びエージェント」も同様に、人が介在するサービスです。
この2つの撤退は、果たして偶然でしょうか。
リクルートが得意としてきたのは、「情報」を軸にしたマッチングビジネスです。求人情報、美容情報、飲食店情報――膨大な情報を集約し、ユーザーの意思決定を支援する。このモデルは、デジタル化との親和性が高く、スケーラビリティに優れています。
一方、エージェント型のサービスは労働集約的で、一人ひとりに寄り添う人的リソースが必要となります。成長のスピードには限界があり、収益性の観点からも課題を抱えやすい。
さらに、婚活エージェントの場合、成婚までの期間が長期化すれば、その分サポートコストも増大することになります。マッチングアプリと異なり、月額課金だけでは事業性を担保しにくい構造なのです。

