内部から改革を行うのは、きわめて難しい
今回、15代会長に就任する堀氏については、前出の宗教二世によれば「韓鶴子総裁は、2015年頃から(これからは)二世信者の時代だと話していて、日本の組織を二世への切り替えをしたい意図もあり、もともと会長に就任させたい意向もあったようです」とのことです。ただ、「教団内での基盤の不十分さもあり、すぐにはそれはなされず、総裁の指示もあり、(堀氏は)副会長(その後アジア太平洋2圏域大陸会長)に就任していた」といいます。
しかし今は韓総裁が逮捕・起訴されて、解散命令の決定が近いなどの状況もあります。そのうえで「韓国の幹部らと相談して、もともとの韓総裁の意向である二世への人事権の譲り渡しになった経緯があるのではないか」と指摘します。
日本国内の高額献金などの被害の実態が明らかになり、旧統一教会への解散請求の裁判が行われて、日本の教団本部もこれまでの韓国からの指示を待つ一辺倒ではなくなってきているのも実情かと思います。
集団調停の成立による被害者への支払い、韓国への巨額な送金の停止など、韓国側からの指示ではなく、日本側からの提案を受けて了承され行われたとみられる動きも出ています。
今後は、これを延長して、韓国主導によるものから脱却して、日本の教団が社会の人たちと向き合い、法律を守り行動していこうとするのか。新しく会長となった人物が日本国内の事情を優先させるような、舵取りをどのようにしてくのかが注目されます。
しかし今も、SNSなどにおける、被害者家族や教団をやめた元信者、宗教二世、弁護士、ジャーナリストらへの誹謗中傷は続いています。
信者には古参信者から、二世、三世もおり、教義のとらえ方についてもさまざまです。こうした信仰の濃淡があり、一筋縄ではいかない人たちをどう束ねられるのか。そもそも、教団はいらないという声もある国民にどう答えるのか。
また、二世の立場の人が会長になることで、これまでの一世信者が引き起こした過去の被害には線を引き、向き合わない姿勢をとる恐れもゼロとはいえませんし、教団内部での対立が勃発する可能性もあります。そうなれば、教団は今後も社会の厄介モノであり続けることになってしまいます。
被害の実情を踏まえて、昨日、田中会長が辞任・謝罪をしたことは、教団が今後、社会のなかで共生してきたいという意思の表明だったのでしょう。しかしながら、会長が「謝罪だから、すべての罪を認めたとか、そういうざっくり受け取られてしまうとこれは困る」という言葉からもわかるように、いまだうわべの謝罪にとどまっている感は否めません。
筆者は安倍元首相銃撃事件以降、田中会長の会見をウオッチしきましたが、信者を多く抱えるカルト思想を持つ教団が、「早くなくなれ、完全に解散しろ」という国民の声が大きい中、内部から改革を行うのは、きわめて厳しいと感じます。その中で、新会長体制で何をどのように進めようとするのか、国民は注視し続けなければなりません。


