企業の社会的意義を重んじる新卒学生がふえている

ビジョンマネジメントができている企業では、社員のモチベーション向上だけでなく、様々な効果が表れている。

会社側からは、「社員の当事者意識が強まり、会社に対する参加意識を持つ社員が増えた」「指示待ち社員が減少した」などの変化が報告されている。

社員1人ひとりが自身の仕事の意味や意義を認識したことで「もっとこうすべき」などの意見を積極的に述べられるようになっているのだ。

さらに、社員がビジョンという共通認識を持つことによって、マネジメントしやすくなるというメリットも生じている。共通認識を持つことで様々な場面での判断軸がぶれなくなるのだ。

一方、社員たちからは、「なぜこの会社に入社したのかを思い出すことができた」「子供に自分の仕事について語れるようになった」などの嬉しい声が寄せられている。

最近では、新卒学生も就職活動において会社を選ぶ際、ビジョンを重視するようになっている。

弊社が実施しているアンケート調査によると「会社を選ぶ基準として重要視したものは何か」という問いに対して、1位は「事業の優位性・成長性・将来性」であったが、続いて「企業理念への共感」「事業の社会的影響力や社会的意義」が2位、3位と並び、上位を占めた。

これらは昨年に比べて大きく上昇しており、仕事に対して働く意味ややりがいを求める傾向は強くなっている。

中途採用市場も拡大し、大転職時代も到来している。景気の回復と人口減が同時に訪れ、採用競争が激化する中で、今後は選ばれる会社と選ばれない会社の二極化が進むだろう。企業ビジョンのない会社は確実に選ばれない時代に突入するのではないだろうか。

不景気の頃は会社の存続が何よりも優先すべき命題であった。だが景気が回復し、ふと気づけば社員は疲弊し、仕事に対するやる気を失っていたという会社も多い。

そんな企業にとっての特効薬、やる気を自家発電する原動力が企業ビジョンである。今後、ビジョンマネジメントは企業にとって不可欠なものとなっていくだろう。

(登上幹千=構成 ライヴ・アート=図版作成)