社員が自分自身で仕事へのモチベーションを高めてくれたらどんなによいだろう。そのような強い組織をつくる仕組みが「ビジョンマネジメント」である。指示待ち社員や、当事者意識の低い社員も自ら動き出すしかけを3つのステップで見てみよう。
大企業の社員ほど、自分が役立っている実感が少ない
企業の安定した成長や発展、業績向上に不可欠な要素として、社員のワークモチベーションがある。しかし、近年「社員のやる気が感じられない」という相談が大企業から多数寄せられるようになった。
その原因は、会社の存在意義や自分の仕事の価値を見出せないためだ。弊社が実施している社員満足度調査によると、大企業ほど「その会社に属すことで自分が社会にどう役立っているのかイメージできない」という社員が多数を占めることが明らかになった。
本来なら中小企業より大企業のほうが、仕事を通じて社会に与える影響は大きいはずだ。しかし、社員にとっては、その実感が薄いようなのだ。実際に、大企業に勤める社員は、現在の会社に属していることについては誇りを持っている。だが、目の前の仕事にやりがいを感じられないという人が多くなっているのである。
特に成熟産業ほどその傾向は強い。自社の提供している商品やサービスが社会に広がり、あまりにも当たり前になりすぎているため、その価値が見えにくくなっているのだ。
「ハワイ旅行」を提供する旅行代理店を考えるとわかりやすいだろう。ハワイ旅行は、30年前であれば人々の憧れであり「そこに行ける」こと自体が価値であった。しかし、現在では「行ける」のは当然で、それだけで感謝されることはない。それよりも価格の低さやホテルの質が問われるようになっている。
極端な例えではあるが、同じ旅行でも「宇宙旅行」を提供している会社の社員は、仕事にやりがいを感じているのではないだろうか。
比較的新しいIT業界にいる人も、インターネットが一般的でない頃からビジネスを始め、自らの仕事による社会の変化を感じている。自社の働きがあるからこそ、その価値が提供され世の中が進化しているという実感があるだろう。
世の中からの賞賛が大きければ、自然に仕事の社会的意義を実感できる。しかし、産業が成熟すればするほど、社会からの賞賛は感じにくくなり、自社の商品やサービスが、どう消費者に喜ばれているのかわからなくなるのだ。
人は、自分が何らかの役に立っていることを実感できないとやる気を維持することが難しくなるものだ。