課題となっているフードロス問題
【五十嵐】結局そういう農業スタイルを求めるかどうかだと思うんですよね。大きな面積で収穫量は多いけれど土地がものすごく荒れて、その回復には多額のコストがかかるので、実は効率の悪いやり方です。むしろ里山のようにものすごく小さいスケールで、しかも生態系を保ちながら農地を活用しているところは確かに面白いなと。
【瀧口】サステナビリティという観点で日本の農業にジャック・マーさんは注目しているんですね。
【江崎】それはある意味で効率的なんです。狭いところをどれだけ有効に使えるのか。今はそこでコストがかかっているけれど、どうせ下がっていくはずだと。
【五十嵐】そういうことですよね。
【瀧口】日本には制約条件があるからこその効率化ですね。
【小熊】すごく日本っぽくていいですね。小さなところにいろいろな知恵が詰まっていて、小さくうまくやるのは。
【五十嵐】今までの農業はアメリカ方式というか、すごく大規模につくる話でみんながどんどん進んでいったじゃないですか。実はその結果フードロス(※4)が生じています。そのフードロスの分まで食べ物だと考えると、大量につくって、大量に損をしていたのが現代の農業だったと思うんです。
ただ、これからは地球全体のバウンダリー(限界)を考えたときに、そんなことはできるはずもない。なるべくロスがなくて、なるべくきれいに小さいところで回せる農業を考えたら日本の農業はもう一回見直さないといけない部分がある気がしています。
※4 フードロス 食べられるにもかかわらず破棄されることで生じる損失。
崩れ始める大量生産・大量消費モデル
【江崎】アメリカの農業って倫理的にも相当悪いことをしていますよね。裏側の話を聞けば聞くほど悪質な材料を使っていたりしますから。
【五十嵐】はい。「安くて多くて」というものが、これからはそう簡単に出てこなくなると私は思っています。その安い理由が地球環境を汚したり、化石資源をいっぱい使っていたりするので。実は人間はそんなに大量にものを食わなくていいという話もあって、いろいろなところが崩壊している瞬間ではないかと最近よく思います。
【江崎】これは食だから人間に対する影響が大きいんですよね。彼らはマネーメイキング(お金もうけ)を考えているので、ロビーイング(政府や議会への働きかけ)をして、レギュレーション(規制)をすごく緩くしていますよね。そのおかげで本当は使っちゃいけなさそうだけど、レギュレーション上は可能にしていることがたくさんあるわけです。
それから自分のビジネスを守るために、レギュレーションをつくって競争相手が入れないようにすることも、すごくうまくやっています。特に種子法がそうです。アメリカは種子を改造できるけれど日本の農家の人はできないんです。

