クマが嫌がるニオイとは
変わったところでは香水のおかげで助かった例もある。
旭川の私の友達の奥さんですが、若い娘さんを連れて勇駒別からはいったところ、クマが現われたわけです。若い人達は逃げたそうですが、その奥さんはつまづいてたおれ、失心に近いようになったそうです。おぼえていることは、クマが奥さんの頭のところに顔をやって、嫌な顔をしていってしまったというんです。きっと香水の匂いが嫌だったのでしょう、山にいくときは香水をたくさんつけていくと良いと、その奥さんが笑ってましたが(笑) (斎藤春雄談「てい談ヒグマ」)『林』(1968年5月号 北海道林務部)
現代であれば洗濯用柔軟剤の、いわゆる「香害」も効果的かもしれない。
古老が語った「遭遇したときの心得」
最後に筆者が調べた中で、もっとも参考になる、クマと出くわしたときの心得を、古老の談話より以下に転載しよう。
もし出合った場合、いきなり駆け出して逃げることは禁物である。熊・犬等は逃げ走る物を追いかける習性があるから如何に早く駆けても四つ足の動物に勝てる訳がない。この様な時は落ちついて相手の目を見て絶対に目を逸らさない事、睨み合いが長くなると熊は必ず目を逸らすから、すかさずたばこか煙の出る物を燃やす。煙を非常にきらうようである。山路の曲がり角でいきなり出逢った場合、熊が異状に大きく見えたと出逢った人はいう。それは熊も人以上に驚き、瞬間全身の毛を逆立てるために異状に大きく見える、(中略)毛を逆立てている時が一番危険な時である。熊が目を逸らす時は逆立った毛も納まった時である。山へ入る時はナタ等を持ち、また、鈴・鐘等の鳴り物を持って行くこと、それらを鳴らし大声を出してもなお、近付いて来る熊は非常に危険である。その様な時は、まず食物を持って居たらそれを捨てる。一目散に走りながらそれでも追ってきたら、ぼうし・手拭い・上着等間隔をおいて捨てる。後は死にもの狂いで逃げるしかない(七、開拓と熊 佐々木辰吉『東山郷土史』)
(初公開日:2025年11月1日)


